武者行列が一斉に歩を止める。一瞬の静寂の後、「撃てー」の掛け声とともに火縄銃が轟音を上げる。「おー」という歓声が沸き、拍手に包まれる中、行列は再び歩み始める。
5月3日に開催される北條五代祭りの盛り上げに一役買っている「小田原北條鉄砲衆」による演武だ。
北條鉄砲衆の発足は、およそ30年前。きっかけは、北條五代祭りの際、「音が無いのが寂しい」との意見だった。
小田原市は、当時NHKの大河ドラマをはじめ、時代劇の時代考証を担当していた名和弓雄氏に依頼。名和氏が民間の団体に声を掛け、日本全国から火縄銃の愛好家に参加を呼びかけ、撃ってもらったのが最初だった。
その後、大井町の中村健作さんが「将来的には地元の人たちで(鉄砲の演舞が)出来る様になれば」との想いを込め「小田原北條鉄砲衆」を立ち上げた。
戦国好きが集結作家・東郷隆氏も
現在は、北村文雄さん(市内成田・(株)キタムラ代表)を組頭に、約20人で活動。そのうち10人前後が北條五代祭りで撃ち手を務める。他にも箱根の大名行列や足柄峠での笛祭りでも演武を披露している。大勢の観客の前で火薬を使用するだけに、警察から使用許可を得るのも一苦労。「誰が、どこで、何発撃つのか、どのくらいの火薬を使用するか」を事前に届け出、了解を得なければならない。商店街の中などでは、ほぼ真上に向かって撃つようなこともあるそうだ。
メンバーの職業は様々。作家で直木賞に6度もノミネートされた東郷隆氏などもメンバーとして名を連ねている。皆、戦国時代好きは共通だが、甲冑や火縄銃に造詣が深い人が多い。骨董品の修理業、前装銃の世界大会出場者などもいる。
北條五代祭りなどで演武を披露する際は、自前の甲冑や火縄銃で参加する。本物の甲冑は鉄製で重たく、一度使用しただけでも傷んでしまい、メンテナンスが必要となる。それでも「自前の甲冑を身に付けているので、皆甲冑姿が板についている」(北村さん)と魅力は何年経っても変わらないようだ。
反動少ない火縄銃女性でも扱い可能
近年は隊員の高齢化も心配な所。「将来のことも考えれば、地元の人や若い人に入会してほしい。入会費は不要。甲冑や火縄銃についてもまずは相談してもらえれば」と呼びかける。火縄銃は撃った後の反動がなく、女性でも撃てるという。「撃った後の爽快感は格別。まずは観光がてら見物してもらえれば」と話す。今年も本丸広場や馬出門、栄町、銀座通り、青物町の各交差点などで雄姿を見ることが出来る。
鉄砲衆に関する問合せは、北村さん【携帯電話】090・3041・9378。
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