全国の熟練技能者が自慢の技を競う『第27回技能グランプリ』が千葉県の幕張メッセで2月22日から4日間かけて開催され、中区初音町の老舗ハンコ店「大賀堂印房(たいがどういんぼう)」の4代目店主・大賀(おおが)雅雄さん(47)が「印章木口彫刻」部門で全国から集まった12人を制し、厚生労働大臣賞を受賞、金賞に輝いた。大賀さんの作品は全体的に無駄がなく、バランスよく文字が並ぶ調和のとれた出来栄え。また彫るのが難しいとされる左右対称の字も美しく仕上げられている点が評価された。
大賀さんが同グランプリ
に挑戦するのは6回目。過去に3度の銀賞受賞経験があるが、金賞は今回が初めて。「ほっとしています。大会では誰が見ても美しいハンコを目指して彫りました」と話す。
技能グランプリは2年に一度開催されており、印章木口彫刻をはじめ、畳製作や日本料理など様々な分野ごとに行われる。出場するためには該当ジャンルの技能検定1級以上が必要で、毎回日本が誇る熟練技能者が全国各地から集う。大賀さんが出場した印章木口彫刻部門へは今年、13人が出場した。厚生労働省と中央職業能力開発協会、(社)全国技能士会連合会の主催。
仕事と並行し猛練習
今回の競技内容は、7時間内に会場で刻字課題『日本宇宙飛行開発機構印』を3cm角の柘(つげ)材に彫り上げること。仕事と並行しながらの準備は慌ただしく、業務の合間や夜に時間を見つけては練習に励んだという。大賀さんは「昨年末に課題が発表されてからは大会のことで頭がいっぱいで、プレッシャーが辛かった」と振り返る。文字の太さや意匠を熟考し、先端の太さが異なる刀を何本も使い分けて練習を重ねた末、見事念願の優勝を手にした。
大賀さんは百年以上続く老舗ハンコ店に生まれ、全国で唯一、印章を専門に学べる「神奈川県印章高等職業訓練校」を卒業。他店での修行の後に実家を継ぎ、現在は母校の研究会で後輩の指導なども行っている。
大賀堂印房では客の要望をしっかりと聞き、確かな印材に精度の高い彫りを施す。職人の手によるハンコはいつまでも変わらぬ印影を残すという。「パソコンと機械があればハンコが作れる時代ですが、手作業のものの良さをもっと広めていければ。そのためにも金賞に恥じない、気品のあるハンコを作り続けていきたい」と語った。
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