かつて市立東門前小学校や市立宮前小学校で校長を務めていた澤口安雄さんがこのほど、中原区の会館とどろきギャラリーで写真の個展を開いた。
澤口さんは6年前、脊髄に細菌が入る脊髄膿瘍を発症し、意識不明の重体で病院に運び込まれた。一命をとりとめたが、頸椎を損傷し、首から下は全身麻痺不随となった。声が出ない、手足が動かない状態が続き、様々な病院で入院生活を送り、懸命にリハビリに取り組んだ。趣味であるカメラのシャッターを押せるようになったのは、2014年9月のこと。花を撮り、介護タクシーを使って王禅寺の禅師丸柿、五郎谷自然公園などを撮影したという。
写真展は、5年間の入院生活を終え、退院できたお礼とまもなく迎える古希の記念に開いた。個展の名称「たま日吉台の四季」は、指が動かせるようになった入院先の「たま日吉台病院」にちなんだという。
4月29日から5月の会期中、入院中に撮影した写真のほか、県指定無形民俗文化財に指定されている初山の獅子舞、犬蔵のどんと焼き、長年撮りためた写真など約60点を展示。招待状を送った多くの友人や現役中の先輩や同僚、後輩たちが駆けつけ、作品鑑賞を楽しむとともに澤口さんの回復を喜んだという。
澤口さんは現在、宮前区で暮らす。深夜2時から3時頃に起床し、読書や手紙を書き、送られてくる学校便りに目を通すことから一日が始まる。1週間に8〜10人ほど人と会い、行きたい場所があれば出かける生活を送る。4月に行われたとどろきアリーナで行われた「大相撲ふるさと川崎場所」や「セイコーゴールデングランプリ陸上2016川崎」にも出かけて「競技観戦と写真撮影を楽しんだ」と笑う。
現役教職員時代は教育現場に経営感覚を取り入れる「学校経営診断」を推進し、学校改革に着手し、名物校長として知られていた澤口さん。現在も学校経営診断研究会の会長を務め、後進の育成にあたっているという。「写真展は、私はこうして頑張っている。だから、後輩のみんなもしっかりやってもらいたい」と、激励する意味を込めて開催したとも語る。
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