繰り返されるヘイトスピーチ(憎悪と差別の扇動表現)の根絶を目指す市民集会が23日、東田町の市労連会館で開かれた。会場を埋め尽くす300人が出席。ヘイトスピーチに反対する市民団体「のりこえねっと」の辛淑玉(シンスゴ)共同代表や弁護士の金哲敏(キムチョルミン)さんが登壇したのをはじめ、地域で暮らす在日コリアンらがリレートークを展開。参加者は差別のないまちづくりに向け、ヘイトスピーチと対峙する決意を新たにした。
川崎市では2013年からこれまで11回、ヘイトスピーチデモが行われ、31日にも新たなデモが企画されている。 市民の抗議の意思を結集させ、ヘイトスピーチを根絶しようと、 「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」(社会福祉法人青丘社、川崎・富川市民交流会、クラック川崎呼びかけ)が集会を主催した。
冒頭、青山学院大学名誉教授で主催者代表の関田寛雄さんが「共生のまちの伝統を守るためにも市としての責任を果たすべき」とあいさつ。続いて登壇した辛淑玉さんは、ヘイトスピーチについて「いかに自分たちの社会を守っていくかの戦い」と指摘。その上で「(反ヘイトに向けたオール川崎の結集は)希望の光である」とし「川崎から新しい力を届けよう」と呼びかけた。
リレートークではヘイトスピーチと対峙する「クラック川崎」の前野公彦さんが語った。前野さんはカウンターと呼ばれる人たちの運動の成果でヘイトデモの参加人数が減りつつあるとし、「暮らしの問題であるとの認識に立って取り組んでいただければ」と、市民のさらなる結集を訴えた。
ヘイトスピーチの標的にされている在日コリアンからも声があがった。在日1世の高齢者クラブ「トラヂの会」のメンバーは「何で今頃になって(差別がまた行われるのか)。差別には慣れているけれど、腹が立つ」と憤った。地域に気を遣いながら生活し「信頼を築いた」歴史を振り返り「差別をまき散らすことは許さない」と叫んだ。
法的な視点からヘイトスピーチへの対応を考える講演も行われた。弁護士の金哲敏さんは「マイノリティーもマジョリティーも個人の尊厳は同価値」と指摘し、ヘイトスピーチは人種差別であると強調した。対応策としては基本法・理念法の制定から取り組むべきと説くとともに、人種差別に関する実態調査の実施の必要性や現行法では合憲的解釈でヘイト団体の公共施設への利用制限をかけていくことの重要性を訴えた。
また、神奈川大学法科大学院教授で川崎市人権施策推進協議会会長の阿部浩己さんは「ヘイトスピーチは表現の自由で保護されるものではない。国際的規約の中では明確に人種差別である」と熱を込めた。
同ネットワークに賛同した3会派の市議団の代表と県議2人も集会に参加。議会内でも同ネットワークに賛同が広がりつつあると説明した上で全会派でヘイト根絶に取り組めるよう努める決意を表明した。
最後には、川崎市に人種差別のない街づくりを推進することなどを求める決議文が採択。今後はヘイト根絶に向けた署名活動を展開し、4月に市や市議会に要請書を届ける。
「規正条例を」
集会には在日3世の母親と日本人の父親のダブルである中学校1年男子生徒が参加。昨年11月8日のヘイトデモ抗議に参加した体験談を涙ながらに語った。
日本人をはじめ、コリアンダブル、フィリピン、ベトナム、ブラジルにルーツを持つ友人に囲まれて育ってきた男子生徒はデモが来ると聞いたとき「共に生きようと呼びかければ(差別者にも)わかってもらえる」と信じてデモに参加。「でも違った。(差別者は)へらへら笑いながら徴発してきた」。「今までの人生の中で一番嫌な出来事。大切な家族、友人を傷つけるデモを許せない」と語った。
男子生徒はまた、大阪市のようにヘイトスピーチを規制する条例を早く作ってほしいとも訴えた。
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