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厚木・愛川・清川 社会

公開日:2023.08.25

「自主夜間中学」が10年目
一人の女性の思いで発足

  • 元教員などのボランティアが1対1で教える

 厚木市中町の保健福祉センター近くのビルで、週一回机を囲む人たちがいる。グループの名前は「自主夜間中学あつぎえんぴつの会」。生徒は10代から90代と幅広く、時間割はなく、都合に合わせて学びたい科目を学びに来る。教える側の多くは小学校の元教員などのボランティアだ。

 学び舎が生まれたのは10年前。生徒の第一号は、森の里に住んでいた渡部フサ子さん(故人)だった。富山出身の渡部さんは戦時中の空襲で小学校を失った。結婚や子育てを終え、もう一度学ぶ願いを叶えようと動き始めた時は70歳代だった。都内の夜間中学に問い合わせるうち、横浜の「自主夜間中学えんぴつの会」にたどり着いた。

 勉学への熱意を受け止めた同会は渡部さんのために厚木への「出前授業」を提案。喫茶店で1対1の授業が始まった。小学校2年生の算数や手紙の書き方、国語はローマ字の仕組みに感激していたという。生徒の数も増え、学び舎はアミューあつぎのフリースペースを経て、今は黒板などが揃う中町の公共スペースを借りている。

 この日勉強していた90歳代の男性を隣で教えるのは50歳代の先生。「戦時中の経験など逆に教わることが多い。どちらが生徒なんだか」と話す。10代の中学生は数年前に東南アジアの国から来日した。以前は日本語が難しく漢字一文字を100回書いて覚えた。「今では学校での勉強も問題ありません。落ち込んだ時もここで相談できます」。生徒の中には、自習を主にしている人もいる。外国出身の生徒は日本語検定に挑戦したり、漢検や原付免許のテキストを開く人も。運営側は「学校へ通うのはハードルが高いという人も来てほしい。顔を見せてくれるだけでいいんです」。

 同会では9月18日(月)に活動の紹介を主眼としたイベントをアミューあつぎ7階で開催。元文部科学省事務次官の前川喜平さんが『夜間中学から教育を考える』と題して講演する。先着80人で時間は午後1時半から。イベントや会の詳細は、同会・岩井さん【携帯電話】090・2238・0837へ。

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