書家として活動し、3月にスペインの国立美術館に作品が収蔵される 新納 寿逕(にいろじゅけい)さん(本名:新納肇子) 東逸見町在住 83歳
感動したものに魂は宿る
○...文字を素材として、その造形や筆の運びの変化で書き手の想いを繊細に表現する書道。黒一色ながら濃淡・潤渇・抑揚などで様々な世界観を創り上げ、これまで国内外の展覧会に多くの作品を出品してきた。書の道を志して今年で70年。教員を退職してからは書に向き合う時間が増え、充実した日々を送ることができているという。
○...日頃から身の回りの自然を観賞し、四季折々の美しさを表現することをモットーとしているが、近年は同居する母が詠んだ俳句を表したものも増えている。昨年8月には東逸見町の「おもしろかん按針」で同様のテーマの作品を並べた個展「母娘(ははこ)展」を開催。そのうちの一つが12月に国立新美術館の企画展でも展示され、その縁で今年3月からスペイン・サラゴサの国立美術館へ収蔵されることが決まった。
○...絵付師の祖父と日本画家の祖母の血を受け継ぐ。中学2年生の時、同級生の代わりに出場した上野の席上揮毫で賞を取ったことをきっかけに書道の道に進んだ。戦後の現代書革新を牽引した手島右卿(てしまゆうけい)に師事。師匠の教えの中で大切にしているのは「感動したものに魂は宿る」というもの。自分が感動したものでなければ他人の心には響かない。だからこそ、共に暮らし自然への感動を共有する母の句を題材にすることで、自身の作品がより輝くという。
○...一つの書を書き上げるには「気が遠くなるほどの苦しさ」を伴うというが、会場に飾られると「1年間の作品への思いや苦労が偲ばれる」と穏やかに話す。今回収蔵される作品とは今生の別れとなるが、「展示を見てくれる人がいることが今後の制作の励みになる」と前向きだ。修行はまだ道半ば。「続けられるだけ続けていきたい」と制作意欲に燃える。
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