メルキュールホテル横須賀で特別展示を開催中(3月4日まで)のつるし雛「結の会」代表 三谷 孝子さん 長坂在住
生き様を1針に込めて
○…華やかなつるし雛が連日人々を惹きつけている。会員約80人が1針1針に心を込めて作った作品は、動物、花、鞠など約6千個。想いや願いは、目には見えずとも訪れた人の心に響くようだ。「結」の名は、メンバーの結束という意味だけでなく、糸偏から生地を縫い合わせる姿も連想できる。そうして結ばれた「絆」は年々強くなっている。
○…つるし雛との出会いは約10年前。伊豆の稲取を旅行した時だった。江戸時代後期、雛飾りを持てる裕福な家庭は稀で、稲取では子や孫の成長を願ってつるし飾りを作っていた。その風習が今に伝わっている。一目見たときから「何ともいえない味わい」が心に残り、1年後、友人が作っているのを機に始めた。それまでも日本人形や木目込(きめこみ)人形などを趣味で作っていたが、やはりつるし雛には独特の「味わい」があった。
○…素材には古くなった着物などを使う。「どんな人が着ていたのだろうと、想像力をかきたてられます」。もう一つ、作る人にとっても心が和む時間となる。家事や仕事、家族の介護の合間にほんの少し現実を忘れて手芸に没頭できる。自身も母親の介護を長年続けたため、同じ境遇の会員の気持ちは誰よりも理解できる。さらに家族にも変化が見られる。「(会の活動で)忙しくなると、うちの夫も家事を手伝ってくれるようになりました。家に帰ると、ご飯とお味噌汁ができていることもあります。これが一番の効用ですかね」と笑う。
○…北海道出身。旦那さんの転勤で横須賀に越し、約40年になる。温暖で海あり山ありの横須賀は「夢の様な所」。もし横須賀に来ていなかったら、つるし雛にも出会っていなかっただろうと想像する。「きっかけって不思議ですね」。誰の人生にも幸せと不幸せがある。その人自身の生き方も、運も左右すると、何かの本で読んだ。達観したような温かい眼差し。言葉にはできない様々な思いを胸に、今日も針と布を手にする。
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