ごみの減量化を推進する葉山町や近隣市町村でここ数年来、家庭用生ごみ処理機「バクテリアdeキエーロ」が急速な広まりを見せている。15年前に考案したのは同町下山口在住の松本信夫さん、恵里子さん夫妻。キエーロの”生みの親”に誕生までの秘話を聞いた。
松本さん夫妻が葉山町に越してきたのはおよそ30年前。当時、大量消費社会の裏で排出される大量のごみが環境破壊に繋がっていると取沙汰される時代だった。そんな背景もあり、元々ごみ処理に関心が高かったという夫妻。「生ごみの処理と堆肥づくりが一度に出来るなら」と市販のコンポストを使い始めた。
ところが大いに悩まされたのが悪臭と虫。もっぱら処理は信夫さんの役割だったが、コンポストを開けると臭いが家の中まで入ってくるため、予め家中の窓を閉め”密閉”しなくてはならない有様だった。それでも庭で育てていた夏みかんのためにと10年以上使い続けたがついに”ギブアップ”。他の処理方法はないかと模索する日々が始まった。
菌で分解するEMバケツは悪臭が強い。電動処理機も使ったが故障が連発する上、交換チップも高価だ。ある時は生ごみをそのまま埋めてみたりもした。なかなかうまくいかない。
完成は偶然に
転機は15年前。元々子ども用の砂場だった場所に穴を掘り、けやきの落ち葉を埋めていたが「物は試し」と一緒に生ごみを混ぜてみた。何日かすると埋めたはずのものが消えた。臭いもなく、虫もよってこない。”実験”は成功だった。その経験をもとに板で箱を作り、中には落ち葉や土を入れ、蓋をかぶせ試行錯誤を繰り返しながらオリジナルの処理機が完成していった
あるとき、地域の掲示板サイトに処理機のことを投稿した。するとそれを機に、次第に口コミが広がり始め、自宅に見学に訪れる人も。「廃油も分解できる。ランニングコストもゼロだ」。皆口々に驚いた。08年には町の環境フェスタに出展。翌年「バクテリアdeキエーロ」と命名した。以降、葉山逗子では助成がスタートしたこともあり、キエーロは瞬く間に広まっていった。現在、両市町ではおよそ千台が普及。近隣のほか全国各地でも補助を導入する自治体が増えている。夫妻は「自分たちが作ったものが広まるのは不思議な感覚だけど面白い」と目を細める。
信夫さんは現在もキエーロ普及に努める。問合せがあれば、自ら車にキエーロと土を積み、配達へ。実費のみ、労力は無償の完全ボランティアだが「直接届けると色んな人の声が聞けてモチベーションになる」と当分は続けていく覚悟だ。
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