3月12日(土)から16日(水)まで元政上人の遺墨展を開催する 萩原(はぎわら)是正(ぜしょう)さん 隆盛(りゅうじょう)寺住職 83歳
元政の遺徳 人生の手本
○…江戸時代初期を生きた日蓮宗の高僧で、文人・歌人として名を馳せた元政上人の史料収集を半世紀以上続けている。住職を務める隆盛寺で年1回開催する遺墨展は、全国から見学者が訪れる寺の一大行事だ。「慈悲深く篤実で、親への孝行を尽くした元政上人の生き方にこそ、人生のお手本が隠されているのではないでしょうか」と説く。
○…福井県出身。太平洋戦争終戦の3年後、古書店で元政の著書『艸山(そうざん)集』を手にした。当時21歳、元政の文学性に感銘を受け、故郷での会社勤めから一転、僧侶の道を生きると決めた。23歳で出家し、日蓮宗総本山の身延山で9年間の修行の後、隆盛寺に入寺。「元政上人が多くの名文を詠んだ身延山で修行ができた。感慨の極みです」と、元政の代表作『身延道の記』の舞台に縁を残した経験が、たゆまぬ信仰を支えている。
○…各地を訪ね歩き収集してきた遺墨数は、全国でも有数の規模となった。第一回の遺墨展開催時には所蔵史料の解説書を書き上げ、元政に関する熱心な研究の姿勢は学識者を驚かせた。5年前には、念願だった『身延道の記』の草稿を入手。元政と縁ある人物の史料収集にも熱心で、芭蕉の俳文『更科姨捨(うばすて)月之弁』など極めて貴重な作品も所蔵している。「元政上人がお仲間を呼んでくれたのでしょうか」と収集癖を笑うが、元政を慕う思いは、不可思議な巡り合わせを叶えるに余りある。
○…「今の日本は心細く、つまらない事件ばかり」と現代の閉塞感を嘆き、「お寺と人々も離れてしまっているのではないでしょうか」とも。「このような時こそ、心の救済が必要。目に見えない力を頂き心を改める。そのお手伝いをすることが、お寺の大切な役割です」。自らの人生を変えた元政の遺徳が、その一助になると信じている。
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