「平塚漁港の食堂」をオープンした平塚市漁業協同組合の組合長 後藤 勇さん 庄三郎丸社長 63歳
豊饒の漁場、次世代へ
○…魚価の低迷など漁業者を取り巻く環境は厳しいが、相模湾の豊饒(ほうじょう)な漁場を次世代へと引き継がなければいけないと、6次産業化をキーワードに「平塚漁港の食堂」をオープンした。組合員が水揚げした魚を持ち寄り、調理人に料理を販売してもらう。「大漁で値がつかない魚や市場の好まない未利用魚の付加価値をいかに高めるか。食堂が賑わって、漁業者も潤うようになれば後継者は育ってくれるはず」と思いを語る。
○…「近くに黒潮が流れ、海底は起伏に富む。これだけの漁場は世界的にも珍しいのでは」と胸を張る。その海で父の船宿を継いだ。朝4時に宿に入り、都内からも訪れるという釣り客を迎える。「ここ数年は、二、三十kgのキハダマグロも釣れるようになった。大物が釣れれば、お客さんも感激して一生の思い出にしてくれる。こっちも嬉しくなるね」。海に反射する陽の光をたっぷり浴びた顔に、白い歯をのぞかせた。
○…知り合いの漁師から今日の水揚げを聞き、目当ての魚を近所の魚屋で買うのが楽しみ。「釣って何時間後の魚を味わえるのは地元ならではの幸せ」と笑顔で話す。その一方、消費者の魚食離れを危惧する。漁協では飲食店と共同で加工品を開発したり、水揚げしたサバを活け締めや脱血処理で生食用にしたりと、高品質化を研究中。今回の食堂も地の魚を楽しんでもらう取り組みだ。「自分で地の魚をおろして食べるくらいの食生活が根付くといいですね」と地産地消や魚食文化の広がりを願う。
○…食堂のオープンは地元漁業活性化への最初の一歩。さがみ縦貫道路の開通に呼応した観光誘致のため、地元の旗印としても期待される。「食事ができるというのは観光ニーズとしてある。この食堂を中心に港周辺に店が増えるようになれば、圏央道から観光バスも呼べるはず。待つのではなく、まず、やれることをやる」。海の男、元気に攻める。
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