「老いの道標」と題して講演する 田中 文夫さん 市内四之宮出身 68歳
山で培った哲学的探求心
○…これまでの来し方をまとめ、人生4部作目となる『老いの道標』を書き上げた。9月6日にひらつか市民活動センターで大野中学の同級生が代表を務める「丹沢の自然を考える会」主催の講演会で、山と仕事と人生について語る。ホームページをのぞくと、山行記録をはじめ登山を文化と捉えた考察や環境問題に関する提言、危機管理とリーダー論などが載っていて学者のようだ。著書に『青春のヒマヤラに学ぶ』『頂きのかなたに』がある。「売れない、売らない作家として人生をスタートさせたところ」と穏やかに笑う。
○…家庭の事情で大学進学を認められず、神奈川工業高校卒業後は放送機器メーカーに就職。会社の先輩に誘われ、丹沢で岩登りを始めた。高校時代に井上靖の小説『氷壁』を読み、「山にはロマンがある」と憧れを抱いていたと振り返る。山登りにのめり込むのと同時に登山とは何か、表裏一体を成す生と死の意味は何であるかを問わずにいられなかった。哲学書や宗教本を読み漁り、「物事の本質を突きつめたい性分」が哲学的な思索へ向かわせた。
○…32歳の時、ネパール・ヒマヤラ高峰を目指し、ツラギの会P29南西壁登山隊に隊長として参加。氷河が約1千m下へ崩落する事故が発生、雪崩による遭難で隊員3人を失う。自身も衝撃で飛ばされたが、クレバス寸前で止まり助かった。40歳に近づいた頃からは電気設備設計の仕事と子育てに没頭。建築設備士第1号合格者であり、県立歴史博物館や横浜港シンボルタワーほか公共・民間施設を多数手がけた。徹夜もしばしば、数年前まで睡眠時間3〜5時間で乗り超える強靭さで走り続け、この夏仕事に区切りをつけた。
○…日本山岳文化学会・総合人間学会正会員。「山で得た体験を通して人の意識と文化・文明・環境の探求をさらに深めたい」と語る。昨年6月から週1度のペースで原点の丹沢に再び登り始めた。横浜市在住。
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