平塚市博物館で初の活動展示を行っている分科会「古代生活実験室」の班長 井上 祐次さん 片岡在住 85歳
古代ロマンに輝く瞳
○…26人の会員が考古学の視点から、石器や土器づくりなど古代人の生活を再現、実証実験している。自身は主に「火起こし」の実験を担当し、遺跡出土品などを元に舞きり式の木製火起こし機を作成している。仕事で培った知識を活かし作図した設計図は、博物館の学芸員も「真似できない」と舌を巻くほど。素材や形状など改良を繰り返し、火起こし同様、同会の活動に「熱い」情熱を注ぐ。
○…65歳で定年を迎え、余暇を充実させるため「古代遺跡を探す会」に加入。古代の土器破片などから、新たな遺跡を発見する魅力に取りつかれた。現在、同会は古代生活実験室に活動を移したが、今でも散歩する時は地面を眺めるのが癖になり、市内の空き地で土器片を拾い、上宗高遺跡発見に貢献したこともある。「かつての金目川の流れを裏付ける重要な要素になるそうです」と古代ロマンに思いを馳せ、少年のように瞳を輝かせる。
○…「子どもの頃は、勉強なんてまともに出来なかったから」。逗子市に生まれ、中学生の時に学徒動員で、金沢八景の海軍軍需工場の技術工員に従事した。父は海軍司令として硫黄島で戦死し、戦後は母と陸軍から戻ってきた兄と共に食糧難を乗り越えた。実験室では土器による製塩や古代食の再現活動もあるが「昔は私も海岸まで海水を汲みにいったよ。生きるのって大変だよね」としみじみ振り返る。
○…茅ヶ崎市で自動車関係の職につき、妻との間に一男を授かった。余暇の趣味探しは妻の助言を受けたもの。「お陰様で今も元気。ここまで来たら死ぬまで活動したい」と相好を崩す。千葉県にいる孫たちは中学生、「火起こしで喜ぶ歳じゃなくなっちゃった」と少し寂しげに肩を落とす。目下の野望は、博物館中庭に古代に栄えた植物を集めた「縄文の森」を作ること。「古代に興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいな」と笑った。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>