パイプオルガンを製作する「パイプオルガンビルダー」 鈴木 肇さん 平塚在住 56歳
『理想の音』を探す
○…国内に僅かしかいない専門職「パイプオルガンビルダー」。この世界に飛び込んで6年目の今年、初の設計・製作を請け負ったパイプオルガンが完成し、山形県酒田キリスト教会でお披露目された。「演奏者の方に、私の声に似てる優しい音だと言われました」と笑う。
○…都内に生まれ、茅ヶ崎で育つ。大学で電子工学を専攻し、在学中にコンピューターシステム開発企業を立ち上げた。特に思い出深いのは、国内初の地下鉄用掘進機械の開発プロジェクト。「百を集めて、ゼロを一にする仕事」はパイプオルガン製作に通ずる。
○…パイプオルガンには甘酸っぱい思い出がある。高校時代、オルガン専攻の教育実習生に淡い憧れを抱き、バッハの名曲『小フーガ』の指導を口実に音楽室へ通った。「上達してきた頃、相手がいるって聞いちゃってね。想いは儚く砕け散ったよ」。受験に専念するため、きっぱり忘れたはずの音楽の道。しかし6年前、偶然居合わせたオルガン体験イベントで「小フーガが弾けなくなっていて愕然」とし、一念発起。市販が少ない楽器のため、「なら作っちゃおう」と、現在の師匠となる横須賀在住のビルダーを訪ねた。見学している内に手伝うようになり、いつの間にか工房へ弟子入り。「本当は演奏したいだけだったのに、突き詰める性格が災いして職人になっちゃった」と笑う。
○…長い時は3年以上を要するパイプオルガン製作の哲学は「一に根性、二に忍耐」。さらに「完成はこの人がいてこそ、だね」と、少し照れた表情で愛妻を見る。パーツ作成も手伝う奥さんを連れて山形の工房や全国の現場を飛び回り、自宅で休めるのは月に数日だが、市内のお気に入り飲食店をめぐるのが楽しみなのだとか。「『理想の音』はまだ探している所。いつか平塚のパイプオルガンも手掛けられたらいいね」
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