今年4月に「女性活躍推進法」が施行されるなど、働く女性が後押しされる昨今。小田原でもこれまで男性が担ってきた職場や、社員の人生を背負う経営職で奮闘する女性の姿があった。
防火着を身にまとった身長156cmの背中には空気呼吸器、右手にはホース。約30kgの重さを感じながら訓練に励むのは、小田原初の消防士・宇田川唯菜さん(21)だ。高校卒業後、小田原市消防職へ入職。消防学校を経て今年8月、隊員として新たな一歩を踏み出した。
国内の自然災害を報道で目にし、「人の命を救って役に立ちたい」と消防官を志した。「傷病者から見れば男も女も関係ない。強い気持ちを持ってやっていきたい」。消防隊員として災害現場への出動はまだないが、有事に備える。火事を想定した訓練では、最前でホースを抱えて建物に侵入。暗い室内で慎重に歩を進め、放水。災害現場をイメージして取り組む宇田川さんは、「怖さはある。体力的にも、精神的にも負担がかかる仕事だと思う」と話す。
指導する消防官歴30年の中隊長・奥川誠二さん(51)にとっても、女性の部下は初めて。それでも、「女性だからといって指導法を変えるつもりはなく、彼女は頑張り屋なので大丈夫」と太鼓判を押す。宇田川さんは「私にはこの仕事しかない。同僚や現場にいる人々から安心してもらえるような存在になりたい」と目を輝かせる。
反転攻勢かける新米経営者
先代の体調不良を機に、期せずして家業を継ぐことになった清水裕子さん(46)は、試行錯誤を繰り返す。音楽業界から2年前に転身し、印刷業を営む扇町の(株)アルファの社長になった。
「リーダータイプではない」と自身を評する清水さんだが、従業員25人の人生を背負い、創業66年の企業経営に挑む。畑違いの業界、未知の役職。時には社員とぶつかることもある。「簡単に信頼は得られない。腹を割ってたくさん話し合ってきた」(清水さん)
専門誌の編集・印刷、チラシの作成に加え、新たなビジネスにも着手した。市のキャラクター『梅丸』をデザインしたノートや、カレンダー、ポストカードなど小田原にちなんだ商品を次々と開発。過渡期を迎える印刷業界だが、同社の業績には明るい兆しも見られる。前職でもチャレンジを繰り返してきた清水さんは言う。「やってダメならしょうがない」。攻めの姿勢で未来を切り開くつもりだ。