「子どもは地域の宝」―。子どもたちの安全を守ろうと活動する人がいる。警察OBによる「スクールサポーター」だ。小田原警察署に現在2人所属するサポーターは、管内の全小中学校を回り、あいさつ運動や防犯教室などを実施。プロの視点から学校・地域と子どもの安全な育成について支援を行っている。
スクールサポーター制度は2002年に埼玉県警で始まったのをきっかけに全国に波及し、神奈川県警は07年に導入。警察OBを中心に、子どもが犯罪に巻き込まれたり非行に走ったりしないよう、あいさつ運動や防犯教室を実施するもので、学校と地域、警察の掛け橋を担う。
このことから、同署でサポーターとして活動する中戸川勇さん(67)と中村清人さん(64)は依頼があった保育園や幼稚園、小中学校に赴き防犯教室を実施している。具体的には小学校1・2年生には誘拐などを防ぐための身の守り方、3・4年生は非行防止、そして5・6年生にはネットやスマートフォンにまつわるサイバー犯罪対策について講義している。
防犯教室で非行防止も
中戸川さんは現役生活のうち35年という長期間、刑事として勤務。定年を迎え、「一回の過ちで人生は台無しになる。未来がある子どもたちに犯罪に手を染めることなく育ってほしい」とサポーターの再任用試験を受けた。
夏休み前などには、毎日のように講演会の依頼が舞い込む。管内では月平均100件前後も中高生が補導されていること、SNSを使った犯罪に巻き込まれる子どもたちがいることを思うと「子どもを守らなくては」と力が出るという。
市内では学校と警察による学校・警察連絡協議会が組織され、情報の共有が綿密に行われている。一方で「地域によって防犯意識にバラつきがある」と指摘。中戸川さんは、「地域の宝である子どもたちの安全は、地域で守る。登下校時に見守ってあげるだけで犯罪被害防止につながるため、顔の見える関係を作っていてほしい」と話している。
小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町の1市3町を管轄する同署では、子どもに対する不審者情報なども寄せられていることから、地域一体となった見守り活動の必要性を訴える。一方で、人目がつかない場所では子どもたち自身が身を守る力をつけることも犯罪を未然に防ぐうえで大切な対策の一つという。