和名「譲り葉」、中国名「交譲葉」 年末年始に飾る「ユズリハ」 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
公園や庭によく植えられているユズリハには、暖かい山地の「ユズリハ」と海岸沿いの「ヒメユズリハ」があります。違いは葉の長さで、ユズリハは15cm以上、ヒメユズリハは6〜12cmで区別できます。
ユズリハは雌雄異株で、雌株にはこの時期、径1cm弱の黒く熟した楕円状の果実が、葉に隠れるように数個つきます。
ユズリハは、春に黄緑色の新しい葉(新葉)が勢いよく伸び、古い葉(旧葉)は垂れ下がり、夏から秋にかけて落葉します。このように新葉と旧葉の交代を顕著に見ることができる様子から、漢字で「譲り葉」と表します。中国でも同じような意味から「交譲葉」と呼ばれています。なお、葉のつき方は互生ですが、互いに重ならないように約120度ずれているので、輪生状に見えます。
枕草子の中でユズリハは、「大晦日に亡き人への供物にする」と記されており、平安時代には、お盆と同じように大晦日に祖霊が帰ってくると信じられていました。また、正月の飾りにも使われ、半紙の上にウラジロを敷き、その上にユズリハの葉を表にして2枚を八の字状に置きます。そして鏡餅とダイダイを重ねます。さらに門松にもユズリハの枝とマツの枝を差し込み、しめ縄にユズリハの枝とウラジロを差し込みます。
昔から日本人は、ユズリハの葉が新旧の交代する様子から「家における世代の引き継ぎが永く続くように」と、縁起の良さを願って飾ったものと思われます。
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