日本民謡協会で師範教授を務め、民謡文化の普及に取り組む 篠宮留久(とめひさ)さん 大矢部在住 75歳
唄い継ぐ役割担って
○…横須賀市内には2500人を超える民謡愛好家がいる。市内で開かれる多くの大会の委員や日本民謡協会師範教授を務め、多忙な日々を送るが「民謡の楽しさは歌詞に込められた日本人の気持ちを知ることにある」と穏やかに語る。魚が大漁で嬉しい時は大漁節を、労働の辛さを励ます時は労働歌を。民謡は暮らしの一場面を切り取った唄で、長い年月をかけて日本各地で唄い継がれてきた。
○…両親は飴売りで、集客のため民謡を披露していた。その背中を見て育ち、歌うことは自然と生活の一部となっていた。少年時代の楽しい時や寂しい時、いつも口ずさんでいたと言う。その後、一度はプロを夢見て志すも断念。20歳頃から独学で民謡にまつわる歴史文献の解読を始める。唄の成り立ちや背景を調べ、塗装業を営む傍ら趣味として続けた。
○…「まず、先人たちの暮らしを知らなければ、今の日本人を知ることは出来ない」。昨今の学校教育ではメロディーだけを繰り返し練習させ、歌詞の解説は後回しになることもあると言い、本質が教えられていないと危惧している。来年度から中学校の音楽の授業で歌唱教材として取り上げられるこの機会に、「語り手として民謡の大切さと唄うことの楽しさを積極的に伝えていきたい」と力強く今後の目標を掲げる。
○…レパートリーは約250曲ほどあるが、現在は主に次世代育成のため、民謡文化の普及に力を注いでいる。愛好家の中でも歴史を紐解き、理解している人はまだ少なく、ただ唄うだけでは分からない歌詞の魅力も知って欲しいと訴える。しかし、「うちの息子も関心が低い。若い人に興味を持ってもらうのはなかなか難しいね。孫なんてサッカーに夢中でさ…」と良きおじいさんの顔を覗かせて思わず苦笑い。普段はスーツより作業着が性に合うという気さくな人柄。肩肘を張らずに楽しむことが長年続ける秘訣のようだ。
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