横須賀三浦教育会館で行われる童謡コンサート(=21日)に出演するオペラ歌手の 下園 理恵さん 浦賀在住 32歳
悲しみを越え、歌を届ける
○…歌うことが大好きだった少女は、今プロとしてステージに立つ。2年前の震災翌月には、宮本亜門演出のオペラ『フィガロの結婚』に出演。音楽家として、自分に何ができるのか。プレッシャーと葛藤の末に歌い上げた。地元横須賀でもその声を響かせる。オペラを身近に感じてもらえるよう、童謡やジブリソングなど誰もが知る曲を加えるのはこだわりのひとつ。「人の声がこんなにも響くんだと間近で感じてほしいです」
○…音楽との出会いはピアノを習い始めた3歳の時。浦賀中時代に自分の武器が声であることに気づき始めた。その声量と歌唱力から合唱コンクールでパートリーダーを任され、ソロで熱唱。卒業文集には「オペラ歌手になりたい」と書き、将来を思い描いていた。高校1年の冬、両親に「歌わせて下さい」と懇願。国立音楽大学の声楽学科に進み、現在は声楽会員組織「二期会」に所属。全国各地のコンサートに出演している。
○…こうして経歴をたどると順調に見えるが、決して平坦な道ではなかった。6年前―。「思い切りやれ」と歌手の道を認めてくれた父親が突然他界した。抱えたのは悲しみや喪失感だけではない。生活のために音楽以外の仕事をするべきか、といった現実と向き合わざるを得なかったのだ。だが、ここで自分を奮い立たせた。「父を送り出すのに泣いてどうする」。立ち上がり前を向くと、葬儀の会場で『千の風になって』を涙も見せず笑顔で歌った。「母がいる。弟もいる。私がしっかりしなきゃ」。その決意が今に生きている。
○…短文投稿サイト「ツイッター」で、「性格は完璧オヤジです」と自己紹介。はつらつとして、明るく強い父親役の姿が日常に現れている。一方舞台に上がると、客席を包み込むような温かさを見せる。悩みを抱えている人や、心が晴れない人を「癒すことができるような歌手でありたい」。その思いを胸にステージに立ち、歌を届ける。
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