中田中央公園の野球場奥にある雑木林に黄色い花が点々と咲いている。この花は神奈川県を含む全国各地で絶滅危惧種に指定されている「キンラン」だ。同公園では自然増殖のため、環境の保護をし、支柱を立ててナンバリングしながら観察を行っている。
キンランは30〜70cmほどに成長するラン科キンラン属の植物で、茎の先端に複数の黄色(黄金色)の花を咲かせる。絶滅のおそれがある野生生物を危機状態によってランク分けするRDB(レッドデータブック)でのカテゴリは、過去10年間で個体群が約30%減少していることから、絶滅の危険が増大している種「絶滅危惧II種」に指定されている。さらに数が減少していくと「絶滅危惧I種」「野生絶滅」「絶滅」へと移行していく。元々国内の里山でよく見られる種だったが、開発などで生育環境が破壊され、数が減少し続けているという。
中田中央公園内のキンランは、公園整備前から残っている野生の株だ。雑木林の笹の中に点在しており、ある程度の大きさに育つか、花が咲かなければ見つけるのは難しいという。公園ではスタッフが花のすぐそばに支柱を立て、ナンバーをふり、株を数えている。4月末で87株が確認されており、昨年と比べ、かなり増加しているという。
ロープで簡単な柵は作られているが、遊歩道のすぐ脇に咲くものもあり、同公園で植物の保護にあたる樹木医・長澤利教さんは「決して持ち去ったり、環境を荒らしたりしないでください」と呼びかける。
生育には菌が必要
長澤さんは「万が一持ち去って育てようとしても、うまくいかないことがほとんど」と続ける。キンランは、菌根菌(きんこんきん)と呼ばれる菌類と共に育つ植物であり、その菌がいない別の環境で栽培したとしても、うまく生育しない。公園内で徐々に増殖しているのは、菌根菌が存在する昔からの環境がきちんと残されていることが大きいからだ。
ギンランも1株存在
絶滅危惧種には指定されていないが、同じキンラン属の「ギンラン」も公園内に1株だけ確認されている。ギンランは白色の花を咲かせる。キンランと対比し銀色のラン「ギンラン」と名付けられたとされている。茎の先端にまとまって鮮やかに咲くキンランと違い、つぼみにも見える小さな花が間隔を空けて咲き、草丈もおよそ15cmと小さく、あまり目立たない。長澤さんは「キンラン、ギンランに限らず、公園内には保護が必要な希少な種類までさまざまな動植物が存在している。来園の際は保護のため、持ち帰ったりせず見守ってほしい」と話す。
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