横浜市が認定・奨励団体として選定する無形民俗文化財保護団体の中には、コロナ禍によって「練習ができない」「発表の場がない」といった現状から活動継続への不安を抱えている団体がある。その切実な声は市にも寄せられており、新生活様式の下、市は新たな支援の方法を模索していく考え。
横浜市では、市域内で継承されている神楽、祭囃子、念仏芸などの無形民俗文化財の保護育成事業を実施し、文化財の保護・継承の支援に取り組んでいる。無形民俗文化財保護団体の認定・奨励制度は、民俗芸能を継承、また後継者育成等に熱意のある団体を認定・奨励団体に選定しており、今年度は75団体が対象。各団体には、楽器の修理や衣裳購入、練習場所の確保に関わる費用など活動にかかった経費の一部を助成している。
「長引けば危機」
会員の高齢化等から継承に課題を抱える団体もある中、コロナ禍によって、複数団体から活動の継続を危ぶむ声が聞こえてくる。
泉区では唯一、中田囃子保存会が認定団体に選定されている。子どもたちへの指導を行う総務の中嶋孝さんによれば、緊急事態宣言中は練習を休止。昨年の学校再開以降は稽古を行っていたが、神社の例大祭や泉区太鼓・お囃子フェイスティバルが中止となり発表の場が持てないでいる。中嶋さんは「観客の前で披露することが技術向上にもつながる。稽古場での練習だけでは子どもたちも緊張感が薄れてしまう」と懸念を述べる。
他区では港北区の念仏芸を行う認定団体、注連引き百万遍保存会は人が集まれないため昨年から活動が全くできていない。金沢区の釜利谷宿郷土芸能保存会も、毎週の稽古を昨年4月から休止。発表会の延期を決めた同区木遣・祭囃子連絡協議会の布川紘一会長は「外に見せる場が少ない子ども囃子は、特にやる気につながるので大変残念」と話す。また、港北区民俗芸能保存会の伊藤武夫会長は、「子どもらに技術を伝えるための練習ができない。長引けば継承の危機になる」と危惧する。
識者の声聞き対策
文化庁では今国会の第3次補正予算に「地域無形文化遺産継承のための新しい生活様式支援事業」を盛り込むなど、コロナ禍で打撃を受けた地域の伝統行事や民俗芸能の支援を進める。支援内容はPR動画の製作や稽古のリモート指導導入等を想定している。他市では、自治体の補助金を活用して映像を作成する団体も出てきている。
市は、こういった動きも注視しながら、「有識者らに意見を聞き、今後、新たな支援方法を探る」としている。
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