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世界遺産と金沢(下) 登録は史跡を守る「手段」 デスク・レポート

社会

公開:2012年4月12日

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 ▽前回、史跡周辺の住民が抱える不安について述べた。2007年7月に世界遺産登録された石見銀山遺跡(島根県大田市)の事例は、その解決のヒントになる。登録への機運が高まっていた同年春、2つのバス路線が整備され、アクセスが向上した。観光客数は飛躍的に伸びたが、振動や騒音、交通混雑で、周辺住民の生活は一変。その訴えを受けた市は翌年、バスの乗り入れを制限し、観光客数は減少した。「大きな決断だった。だが、世界遺産は経済効果だけが目的ではありません」。大田市の担当者は語る。訴えが聞き入れられた背景には、遺跡周辺の住民たちが50年以上続けてきた町並み保存運動がある。全戸加入の文化財保存会は、行政と密にやりとりし、信頼関係を築いてきた。

 ▽金沢で石見銀山の例がそのまま当てはまるわけではないが、史跡周辺が住宅地で、「観光地化」されていない点では共通する。交通利便性と住民生活のどちらを優先するかという議論も、大いになされるべきだ。他方で、大田市民のような「史跡を保存する」という意識を、どれだけの区民が持っているのだろうか。

 ▽約10年前から活動する横濱金澤シティガイド協会のあるメンバーはこう語る。「金沢の史跡が世界遺産候補になったこと自体がすばらしいのに、それを理解している人が少ない」。機運の盛り上がり以前に、2つの史跡の価値を、区民の多くが認識しているとは言い難いという。「外から人が来てどうというよりも、まずはその値打ちをわかってもらいたいんです」。前述のとおり世界遺産活動は、文化財の保護が目的だ。地元の史跡を守る意識が低ければ、その本義から外れよう。

 ▽大規模な宅地開発の波が金沢を襲った50年ほど前、称名寺裏山も切り崩されようとしていた。だが、それを阻止したのは、ほかでもない金沢区民だ。団結した区民は反対運動を繰り広げ、貴い史跡を守りぬいた。それを受け継ぐ私たちが意識を高めることはもちろんだが、地元向けに史跡の価値をアピールしていく努力は、登録を推進してきた行政の役割だ。「目的」ではなく、史跡を守る「手段」として、世界遺産登録を生かす。行政と住民とが、その共通認識を持ち、「世界が認める金沢」にしようではないか。

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