神奈川学園中学・高等学校の生徒有志がマーシャル諸島で1954年に起きた、日本のマグロ漁船乗組員らが核実験の影響で被ばくした「ビキニ事件」の記憶を継承する「デジタルアーカイブ」に現地の小中学生たちと取り組んでいる。6月1日に区内で行われたイベントで、生徒が活動内容を発表した。
マーシャルと神奈川の未来をつなぐプロジェクト、通称マーシャルプロジェクトと呼ばれるこの取り組みは、同校有志が2020年から行っている活動。もともと同校では、平和教育の一環として毎年中学1年生がビキニ事件の被害について展示されている第五福竜丸展示館を訪問。また、第五福竜丸の乗組員だった大石又七さん(2021年死去)を毎年招き、生徒への講演会を行うなどの活動があった。
そして同年、マーシャル諸島に関する著書がある中原聖乃さんが同校で講演を行い、デジタルアーカイブの計画を紹介。中原さんの仲介のもと、現地の小中学校にあたる「コープスクール」との交流を始めた。
時を同じくして、新型コロナウイルス感染症が世界中にまん延。当初は手紙のみだったやり取りがウェブ会議システムに変わり、月に1、2回の頻度でオンライン交流が始まった。
お互いの文化の紹介など交流を重ねていく中で、デジタルアーカイブの取り組みも進んでいった。インターネット上の地球儀に写真や情報を記せるプラットフォーム「Re:Earth」を活用し、両校の生徒が日本語と英語で投稿。
神奈川学園の生徒たちは同校のビキニ事件についての取り組みや、三浦市三崎の文化や歴史について投稿した。ビキニ事件では三崎港から出漁した多くの漁船が現地で被ばくしており、生徒たちは昨夏に同市を訪問。豊漁を祝う民俗芸能「チャッキラコ」や、被ばくしたマグロが投棄されたと言われる島などについて見聞きしたことが記されている。コープスクールの生徒は核実験が行われた場所や、聞き書きした親類の半生などを紹介している。
今月頭には、横浜大空襲に合わせて区内で行われた、戦争被害をテーマにしたイベントにプロジェクトメンバーの5人が参加。これまでの取り組みを説明した。メンバーのひとりで高校1年の清水一花さんは「ビキニ事件の記憶を一つの形として残すことができて安心している。記憶が風化されないよう、継承していきたい」と話した。
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