映画『あの日のオルガン』の原作を書いた 久保 つぎこさん 鶴牧在住 76歳
「人に優しい」社会を
○…今年2月に映画化され、8月から全国で自主上映が始まった『あの日のオルガン』。1982年に上梓した『君たちは忘れない 疎開保育園物語』を改題し、映画と同じ題名で復刻版として出版され、映画の原作となった。「30年以上も前の作品が映画化されるなんてね。びっくりしました」と笑顔を見せる。
○…本好きだった少女時代。将来は文筆業に就くことを志し、大学ではひとまず国語の先生になろうと文学部へ。以後、桐朋学園演劇専攻科を経て、劇団民藝に入り『あゝ野麦峠』などの舞台に出演した。結婚後、3人の子どもを育て、生活費を稼ぐために童話を書き始めた。今回映画化された『あの日のオルガン』だけでなく、夫の友人だった宮崎駿氏からの依頼によって『となりのトトロ』の小説化も手掛けた。「編集者や童話作家の優れた先輩方に手助けされて、人運がとても良いんですよね」と笑顔で話す。
○…多摩市に転居してきたのは20年程前。地震が怖く、地盤の良い場所をと選んだのがこの地だった。「誰かと知り合いになりたい」と探している時に、図書館協議会委員の公募を見つけた。「作文の競争で負けたら物書きになれない」と一生懸命になって書いて応募。委員になることができた。それから、いろいろな多摩市民の人たちと出会い、ニュータウンならではの生活を始めた。
○…長く取り組んできているのが異世代との交流。息子の助けも借りて、ライブハウスに通い、若い人たちともよく話す。考えていることを言葉にしたいし、意見も聞きたい。そして反対意見を理解できる「人に優しい」社会をと願う。「多摩市ならではのお付き合いを、ゆっくりゆっくり」。そうやって言葉と言論を活性化する。それがこれからの目標だ。
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