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阿部志郎の日々雑感 最終回 ボランティアとは【2】

掲載号:2018年8月24日号

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阿部志郎(92)日本の社会福祉事業者。32歳で社会福祉法人横須賀基督教社会館の館長に就任し、以後50年間、地域福祉や教育の現場で尽力。戦後社会福祉のパイオニア。
阿部志郎(92)日本の社会福祉事業者。32歳で社会福祉法人横須賀基督教社会館の館長に就任し、以後50年間、地域福祉や教育の現場で尽力。戦後社会福祉のパイオニア。

 前回は、私がボランティアに出会った経緯を話しました。その続きです。

 戦後、ボランティアが育つには時間がかかりました。その成果がどこに出たかといえば、阪神淡路大震災です。全国から140万人がボランティアとして集まり、「ボランティア元年」とも言われました。私は震災の翌週、神戸に入りました。その時見かけたのが、10代の茶髪の少年たち4人。おそらく人の為に働くのは初めてでしょう。その子たちが雨の中、救援物資を濡らすまいとかばって救援所に運ぶ姿に感銘を受けました。優しいという字は憂いに人がかかわると書きます。人の苦しみを見て優しさを学ぶのだと―。改めて実感しました。

 東日本大震災では、ボランティアは160万を超えました。この時テレビに映った、一人の少年が「申し訳ありません」と頭を下げる姿。悲しみにくれる被災者家族にむけ「生きのこってしまい申し訳ない」と頭を下げたのです。立派な少年だなと感心しました。

 震災で悲嘆にくれる被災者たちの様子をテレビでみた刑務所の受刑者たちが、自分たちで自主的にお金を集めるということがありました。最終的に、全国から6000万円が寄付されました。受刑者というのは自分の利益を図って、人の利益を踏みにじった人たちです。その人たちが、人の幸せを願ったわけです。刑務所が我々に光を照らした。日本の文化の可能性を見出しました。



 ボランティアというのはボランタリズムという思想から始まりました。人より一歩先に出る、2人より一歩遅れ問題を拾い上げる、共に歩む、時の流れに逆らう。この4つ。問題提起をし、新しい政策を提案することです。

 今から62年前、「マリアンヌちゃん事件」という問題が起こりました。スウェーデン人の父親とアメリカ人の母をもつマリアンヌちゃんは横浜に住んでいました。ところが両親2人が病で亡くなり、養護施設で引き取ることになりました。すると、スウェーデンから「マリアンヌを引き取りたい」と要請があり、裁判にまで発展しました。その時、参考人として参加したスウェーデンの総領事が「スウェーデンには一人の孤児に対して養育を希望するボランティアが100人いる」と主張しました。当時の日本ではその反対、100人の孤児に対して1人のボランティアがいるかいないか―。そこで日本と欧州の違いに気づかされたのです。スウェーデンにはたくさんの公園があります。日本の公園のブランコ・滑り台・砂場などはすべて大量生産ですが、スウェーデンはすべて住民が子どもの為に組み立てた木製の遊具です。住民参加によって一つの公園が作られます。

 現在の日本のボランティアは行政が作った制度・施策に参加することでしかありません。スウェーデンのように層が厚くなれば、NPOが主導して住民が仕組みを作りだすでしょう。そして逆に、行政が取り込んでいく、それがボランティアの理想の形です。



 日本が理想のボランティアに近づくにはどうしたらよいのでしょうか―。

 日本は「鬼は外、福はうち」という社会です。うちとよそ、日本の家族性が表れています。日本の武家屋敷では、お客さんが来た時に使用する客間に、武者隠しという空間があります。どんなに立派な客が来ても家来が刀を持って潜むのです。心を許しません。これがうちとよその区別です。「人を見たら泥棒と思え」と教わったわけです。隣という字にも投影されています。日本では村境など場所を表すために使用され始めましたが、英語で隣を表す「Neighbor(ネイバー)」は人を指します。地域を指しているわけではありません。血縁に対する認識についても、欧州と日本は大きく違います。日本は、親がいて子がいて孫がいて、と縦のつながりが強くなっています。「何代目」なんてよく言いますね。ところが欧州の社会では、夫婦が基本です。夫と妻は他人。子どもが生まれて初めてつながる他人同士です。他人との距離感があります。

 しかし日本では、隣近所、親族、会社の仲間など、日本は助け合いをしてきました。今も盛んです。葬式に行ったときに香典を持っていきます、すると香典返しを頂戴しますね。結婚式でも同様。お返し主義のある国です。欧州に行けばそんな人はいません。遠の昔にその文化が無くなってしまったのです。しかし、日本はまだ残っています。仲間同士、顔見知りの支え合い、これを互酬といいます。北海道・奥尻の災害の時、横須賀のひとりの老人が義援金を持ってきました。「私は関東大震災で助けられました。そのお返しです。奥尻に送ってください」と言ったのです。私は2つのことに注目しました。一つは、70年前に助けられたことを覚えていたこと。もう一つがお返しをするのは助けてくれた人ではなく、見ず知らずの人のもとへ行くこと。

 東北の震災の時、中越地震で援助を受けた新潟県の20超の市町村が、合計1万4000人の避難者を受け入れると発表。家畜感染病の口蹄疫が広がった時に助けられた宮崎県は、24時間ぶっ通しで支援物資を送り続けました。函館は、岩手県に200を超える漁船を寄付。これは、昭和9年に大火があった時に援助を受けたお返しです。このように、互酬が普遍化したのです。

 日本でボランタリズムをさらに広げていくにはこの文化を掘り起こすことが大事になります。私は正直、互酬という文化は封建的で古いと思っていました。しかし、震災でそれが生きた時、考え直しました。互酬ががボランティアの層を厚くする一つのカギであると考えます。

 あまり、まとまらなくなってしまいましたが、終わりにしたいと思います。
 

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