現代美術家で市美術館で個展を開く 前川 正明さん 菫平在住 63歳
惚れた街でのんびり創作
○…哲学的な命題を独特の作風で形にし、国内外の個展で発表している現代アートの芸術家。心疾患の通院と療養のため５年前、都内から移住した。初めて見た七夕まつりにさすがの芸術家も驚いた。「あれだけの飾りを生み出す力は凄い。世界でも例がないかもしれない」と目を丸くする。「行政の対応も温かく、安心して暮らせる。海もあるし、花火も楽しみ」と、平塚の街にべた惚れの様子だ。
○…都内で生まれ、父を早く亡くした。高校卒業後に警備の仕事で学費を貯め、芸術を学ぶために25歳で大学に入学。32歳で渡米し、サンフランシスコ芸術大学で修士課程を修了した。米国で在学中、神と人間の間の存在を表現した「Ｈｕｍａｎ Ｄｏｇ」の造形をモチーフにした作品を数々発表。「一目で前川作品とわかる」と話す印象的な作風で、地元紙の話題にもなった。
○…帰国後も国内外の個展で活躍する一方、飲食しながら芸術を身近に楽しめるバーや、学芸員らを育てる芸術学校も経営した。「アートに関わることで興味あるものは全部やりたかった。思いついたら、どんどん始めてしまう」と笑う。企業タイアップの外壁オブジェや空間アートをはじめ、国内外１００人の芸術家作品を集めた展覧会のプロデュースも手がけた。
○…「規模や雰囲気、一番好きな美術館」と評す平塚市美術館での個展（８月13日〜18日）では、現象学を唱えたドイツ人哲学者のヘーゲルや核などに対する捉え方を形にした新作を発表する。「広島や長崎を経た民族だから核にＮＯと言える。でも意見は人それぞれ。何かを考えてもらえれば嬉しい」と語る。「現代美術はわかりづらいですが、人の評価で判断するのではなく、見る人が自分で『いいな』『嫌だな』と自由に意見を言って欲しい」とも。海外での個展も計画中だが、市美術館で発表しながら、のんびりと作品づくりに向き合っていくつもりだ。
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