新春特別インタビュー 特集 医療・介護 「年1回の検診」を習慣に 小田原医師会・横田俊一郎会長
TPPや税と社会保障の一体改革など、医療、保険、介護の分野で大きな胎動を感じた2012年。政権も交代し、今年は地域の医療・福祉の分野においても、改めて国の方向性に注目が集まる。本紙では小田原医師会の横田俊一郎会長にインタビュー、小田原医師会の対応などを伺った。
聖域なき導入医療格差に不安
―あけましておめでとうございます。昨年末の総選挙では、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉参加問題も争点となりました。改めてTPP参加が医療の面で及ぼす影響についてお伺いします
「TPPの交渉でアメリカが日本の市場として狙っているのは、サービス業、特に医療関係だと思います。日本医師会は、医療分野の聖域なきTPP導入については反対を表明しています。
日本は国民皆保険制度が整備されているので、私的保険で賄う部分というのは、あまり大きくありません。アメリカでは、私たちが医療保険で賄っている部分を保険会社がサポートする形になっており、貧富の差が医療格差に表れています。
もしTPPに参加するとアメリカのように自由診療が認められ、混合診療が完全解禁となり、日本が誇る皆保険制度が崩れていく恐れがあります。
病気になるのは貧富の差の問題だけではありません。「保険に入っていないと良い医療が受けられない」アメリカ型に移行するのではなく、「いつでも」、「誰でも」、「どこでも」同じ医療を受けられる、日本の医療を守らなくてはなりません。そこを理解して欲しいし、崩されてはなりません。これは私たち医師が問題にするだけでなく、地域住民の皆さんが自分自身の問題として考えてもらえればと思います」
―消費税の増税(2014年4月から8%、15年10月から10%)や高齢者の自己負担割合の増加など、今後「受診控え」などが懸念される要因が増えてきます。ますます身近な「かかりつけ医」の存在が重要になると思われますが、この点についてお伺いします
「高齢者の自己負担は、今は低く抑えられているので、ある程度上がるのは致し方ないかもしれません。
消費税について、医療費は原則非課税になっています。医療費にも同じように消費税が課税されると、確かに医療の手控えになって必要な受診が遅れるので、それはぜひ避けて欲しいと思います。
現在、医療費は消費税非課税ですが、私たち医師が医療・治療のために購入する器具や薬品には消費税が加算されています。これらを治療で患者さんに使った場合、患者さんからいただき、納税することになるはずですが、患者さんから消費税分はいただいていません。診療報酬に組み込まれていることになっていますが、見合った引き上げもなく、実際には払った消費税が還付されないで、医療機関の負担になっている部分が多くあります。大きな病院では「億」を超えるようなところもあり、経営の大きな負担となっています。
そのため消費税課税はするけれど税率をゼロにして欲しいと日本医師会では要望しています。非課税では還付がありませんが、ゼロ課税であれば還付が可能になります。非課税もゼロ課税も患者さんにとっては一緒ですが、私達にとっては大きな違いがあるため、引き続き要望していくつもりです」
県西は必須准看護師の力
―昨年末、神奈川県と県医師会の間で、准看護師養成施設への補助打ち切りが2年先延ばし(14年度末→16年度末)となることで和解が成立しました。神奈川県医師会は今後、養成施設を運営する団体とともに、准看護師から看護師養成施設への転換を検討するとのことですが、この点について小田原医師会としての見解をお伺いします
「黒岩祐治知事は制度上、準看護師制度を止める政策を掲げていますが、それに対して日本医師会は、准看護師制度がまだ必要だとし、即座の廃止には強く反対しています。
神奈川県内には准看護師養成の学校は少なく、医師会と関係があるのは、小田原のほか川崎と相模原だけです。県立の准看護師養成の学校は、黒岩知事の権限で今年の入学者で最後となりそうです。
県は、准看護師養成の施設への補助金を2013年度入学生で最後にするといっていましたが、昨年末2年先送りにすることで医師会と合意しました。准看護師の養成を止めるかどうかは設置者に任されています。ただ補助金を廃止することで、県は側面から(准看護師養成施設を)止めさせる働きをしています。
県は「看護教育のあり方検討会」を立ち上げ、その中で准看護師の養成は止めるべきだ、という結論を出し、それに基づいて動いています。しかしこの検討会は准看護師養成に反対の人ばかりを集めて立ち上げたもので、結論は決まっていました。その様な一方的な既成事実を突きつけて廃止を迫っているのが現状です。
しかし神奈川県は、人口に対する看護師数が全国で一番少なく、今すぐに准看護師養成を止めたりすれば、さらに看護師が不足することが考えられます。准看護師養成から正看護師養成への切り替えは簡単なことではなく、時間がかかります。実習施設の確保、教員等も再教育が必要になってきます。県西地区は、高齢者が入院するような療養型の病院で准看護師の方が多く働いており、病院や介護施設などのアンケートを見ても、准看護師が必要という施設が大部分です。
また働きながら資格を取れるのがメリットなので、子育てを終えたお母さんが手に職を付けるために入学しているケース等も多く、准看護師をめざす受験者数も年々増加しています。そのような様々な側面から、医師会ではすぐに止めるわけにはいかないと主張しています」
―今年はいよいよ新しい医療会館(仮称・新小田原衛生総合医療会館)の工事が始まりますが、看護学校の配置はどのようになりますか
「当初は城内の小田原看護専門学校がそのまま市立病院向かいの新校舎に移転する予定でしたが、准看護師を養成する学校が新しい施設に入ることを知事が了解しなかったため、久野の小田原高等看護専門学校が新校舎に移り、久野に准看護学科が移転することになります。今月中に工事業者が決定し、2月から工事に着工する予定です。完成は2014年の2月ごろで4月から新体制で開校を迎えます。
看護学校の大きな目的は、市立病院に看護師を供給することですので、市と協力してやっていくつもりです。市と医師会との連携は出来ていると思います」
―2013年の医師会の方針や活動、抱負などありましたらお聞かせください
「法人制度改革により小田原医師会は4月から一般社団法人に変わる予定です。基本的に方針はこれまでと変わりません。
医師会のメーンの活動は「学術」と「親睦」と言っています。
学術とは、会員がきちんと勉強をして、最新の医療を身につけていること、親睦とは、医者同士がお互いを知っていることです。医療というのは決して1人では出来ません。お互いの医療機関とか病院が情報をやり取りして、地域としてまとまった力を発揮していく、それが地域医療の原点だと思っています。そのためには、まずお互いを知ることが大切です。どこで何ができるということだけではなく、医者同士がお互いを知っているということが大切ですから。
また地域住民と行政と医療関係者、この3つが一緒になって医療を作り上げていくということが一番大事なので、連携がきちんと取れるように行政ともしっかり話し合う、住民の人たちにも広報活動をする、ということが必要だと思っています。
医師会の合唱団の活動は、自分が診てもらっている先生が歌っているのを見ることにより、親しみを感じていただくという効果があります。このように地域の皆さんと私達とを繋ぐような活動にも、さらに力を入れていきたいと思います」
検診の受診率向上に要PR
−−小田原市は検診の受診率が低いと聞きました。予防医療については定期検診とそれを促してくれるかかりつけ医の存在はとても重要ですね。
「検診については、ある程度年齢を重ねた方の定期検診の受診率が低いのが問題です。40歳くらいになったら毎年1度は検診を受ける、という考え方を持って欲しいのですが、中々浸透しないですね。『自分は大丈夫』とか、逆に『病気が見つかったら怖い』などと思い検診を受けない方がいるのは事実です。
ただ早期発見ならば治る病気も多いですし、定期検診を進めたほうが、国全体の医療費も抑えられることが判っています。病気の怖さや早く見つけると治る、ということを納得してもらうのはなかなか難しいです。PRはしているのですが、もう少し広めたいですね。
検診については、企業の理解も必要で、例えば検診の日は公休とするような対策を取ってもらうのも良いかも知れません。
1年に1日、自分の身体の健康のための時間をとる、という気持ちになってもらえればと思います。脳血管障害による死亡が多いというのも小田原地区特有の現象ですが、血圧を下げるためのライフスタイルの改善などにも取り組んでいきたいです。
本当は学校教育の中に健康の問題をもっと取り入れて欲しいと思うのです。授業の中で病気とか健康についての授業が余りにも少ないのが現状です。「風邪ってナニ?」と言っても実はなんだか解らない人がほとんどだし、麻疹や風疹の予防接種を受けに来ても、それがどんな病気か知らない人も多いです。
誰でも知っておくべきことを、教育の中できちんと教えてもらうことが私の願いです。10年、20年先に成果が出ることになりますが、それでも一番の近道なのかなと思います。
ノーベル賞でiPS細胞などが注目されましたが、どんなに医療が進んでも人が死なないということはありません。
生まれて死んでいくのが人ですからそれは否定しようがありません。どうやって育っていくか、どうやって死んでいくか、実はそういう部分も大事なのだと思います。命を大切に生きるために検診を受ける、自分の体を良く知っていることが大事なのです。
長生きしたいのは皆思うことですが、少しでも元気で生きている方が絶対いいわけですから。年齢を重ねてくると、命に限りがあることを実感しますが、若い人はなかなかそういった考えには至りません。でも、若いうちからぜひ考えておいてほしいと思います。
例えば子宮頸がんはゆっくりにしか進まないがんです。1年に1回検診を受けていれば、必ず早期に発見が出来るのです。それでも国内で2000人とか3000人の人が毎年なくなっていて、いかに検診を受けていないかを痛感させられます。皆が受診していれば、子宮頸がんになる人を限りなく0に近づけることが出来るわけです。なので、子宮頸がんの予防接種の際には、啓発の意味を込め、中学生と保護者の母親には必ずそのことを伝えています。
授かった命を大切に生きるために、まず1年に1回は検診を受けて欲しいと思います」
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神奈川県警察官友の会社会全体の犯罪防止や治安維持に寄与し、民間の力を合わせて警察官を支援 |
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