将来の小田原を活性化するキーワードの一つ「観光」。小田原市や商工会議所が揃って観光ビジョンを策定し、今年6月には神奈川県西版「DMO」として「かながわ西観光コンベンションビューロー(以下、KCV)」が立ち上がった。今年は小田原城のリニューアルを起爆剤に多くのメディアに取り上げられ、2019年にラグビーW杯、2020年に東京五輪など大型イベントも控えており、さらなる誘客が期待される。
しかし、「いざ」という時の受け入れ態勢は盤石だろうか?インフラを始めとするハード面は?おもてなしを担うソフト面は?そして課題は?本紙では、古川達高KCV代表と鈴木悌介小田原箱根商工会議所会頭に「観光」を切り口に、未来のビジョンや街づくりについて、何が必要かをざっくばらんに語ってもらった。
「らしさ」から「ならでは」
鈴木=KCV代表、ご就任おめでとうございます(笑)。
古川=ありがとうございます。残りの人生かけてやります(笑)。観光のお手伝いをさせてもらうわけですから、小田原の30年後位までのビジョンやグランドデザインを描けたら、と思っています。
鈴木=観光のことで言うと小田原は昨年、箱根・大涌谷の火山活動(※1)があって、小田原と箱根は一体の経済圏であることを痛感させられました。
一方で、小田原の観光は結局、箱根に「おんぶにだっこ」だったことが露呈しました。改めて小田原自身で観光客を呼べる「観光の核づくり」をする必要があると考えます。
そこでまとめたのが、当会議所が5月に発表した44項目の提言からなる「小田原箱根の観光ビジョン」(※2)です。
私は最近「小田原『らしさ』ってなんだろう」という議論をやめようと話しています。小田原『らしさ』といって思い描くものは人それぞれですから。
古川=城下町の風情だったり、交通の便が良い所だったり、魚が美味しいとか、蒲鉾が美味しいとか(笑)
鈴木=そう(笑)。それよりも「小田原『ならでは』」の議論をしようと。そうすると焦点が絞りやすくなると思うのです。
小田原城天守閣を中心にして、家康が真似をしたという全長9Kmに及ぶ総構や小田原用水、石垣山の一夜城までを含めると、ある意味、街全体が歴史テーマパークになります。それこそが「小田原ならでは」の観光資源だと。他の都市でショッピングセンターは作れても、城は作れないわけですから。そこを磨き上げることが小田原の観光にとって一番大切なことだと思います。

キーワードは役割分担
古川=そう考えた時に、小田原の駅前から天守閣の周りがどういう姿で見えるべきか、というのは大切だと思います。
観光客の目線に立つと、小田原駅の東口に降りても、第一印象で歴史ある城下町に来た、とは思えない。感動がないし、物足りなさを感じると思います。これは少し時間がかかっても街づくりのプランを出して整備するべき。建物を全部建て直すのは無理でも、通りごとに何か一つでもいいからデザインを統一するとか。今のままでは『ならでは』を感じられません。
「小田原に大河ドラマを」(※3)という動きもあるようですが、もし今、大河ドラマが決まったら、逆に「どうするの?」と思ってしまう。大河ドラマは、小田原に振り向いてもらう一つの方法でしかありません。
やはり『ならでは』の要領で絞って、他のものをサブの魅力として、きちんとグランドデザインとして絵にすれば、色々なものが具体的になるし、スケジュールとして落とし込まれるのでは、と思います。
鈴木=おっしゃる通りですね。例えば、東口を降りた時に何が見えるべきで、何が見えないべきか。それは行政と民間が手を携えて議論しなければいけないことです。キーワードは『役割分担』。行政がやるべきこと、得意なこと、民間がやるべきこと、得意なことがそれぞれあります。1+1が3にも4にもなるように、民間と行政で役割分担とすり合わせができれば、住む人にとっても観光客にとっても良い街づくりができるのではと思います。
古川=なるほど。もう一つ言わせてもらうと、私は観光を語る際には、経済がともなわないと意味がないと思っています。
例えば城の南側の観光バスの駐車場。確かに便利だけれど、観光客が「城見て、おしまい」って必然的になるようなロケーションはおかしい(笑)。
先日、バスタ新宿(※4)に行ってきたのですが、東京でもああやって分散していたバスの発着所をまとめることで一つの資源を生んでいます。こういった事業こそ、行政が率先して取り組んでほしい事業だと思うのです。
実はKCVで山梨との連携をどうするかという話が出るのですが、山梨の場合、移動はバスが基本。バスターミナルは大きな要素となります。なので、例えば小田原駅前の再開発予定地にバスターミナルを集約し、羽田や成田への発着便が停まれるようにすればいいのになぁと思います。そうすると電車で来る人も、バスで来る人も、駅を降りてお城に向かって、の道順が明確になるからです。
あくまで私案ですが、小田原全体の経済が潤わないといけないのだから、スピード感が大事。行政では中々絵が見えてこないが、民間ならスピード感を持ってできるのでぜひ、議論したいし、検討してほしいですね。
鈴木=商工会議所では、今年創立70周年を迎えるのですが、11月29日に行う記念式典で、将来の街の在り方をビジュアルにして出します。もちろん「こうでなければいけない」という最終的なものではなく、いわば夢プランですが、絵があることで実りある議論が生まれることに期待しています。今は観光施設にしても公共施設にしても一つの建物について、良いとか悪いとか、好きとか嫌いとかの議論になっている気がします。全体像をはっきりさせたうえで議論しないと不毛な議論になると考えます。
古川=ぜひ行政側にも、議論に参加してほしいですね。せっかく商工会議所が時間と暇をかけて(笑)、絵を作ってくれるのですから。駅前の再開発や芸術文化創造センターも立ち止まっているのですから、いっそのこと、その絵が出るのを待ってから方針を決めてもイイですよね。時期がどうこうじゃなくて、落ち着いてできる体制になるのを待つのも一つの方策だと思います。
重要なトップの決断
鈴木=商売の中で「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という言葉があります。マーケットインはお客様の声を聞いて、競争相手を分析して、市場の求めるものを提供する。一方、プロダクトアウトは、商品の作り手が、自社の技術やサービスを駆使し、市場の欲しているものを作り出すことです。
街づくりや観光の核づくりにはプロダクトアウト的な発想も必要。例えば小田原『らしさ』より『ならでは』を求めた時に、小田原城を観光の核とし、城を通してプロダクトアウトする、そういう決断や明確なビジョンが必要です。
古川=トップが思いを込めて、時に「これでどうですか!」というプロダクトアウト的な発想も必要だということですね。みんなの意見を聞くのも大切ですが、未来の小田原を描いた構想を打ち出して、発信してほしいです。
鈴木=日々の経営で思うのですが、やはりトップが明確なあるべき姿を最終的に示していかないと。「皆さん、さぁどうしましょう?」だけではね。
古川=小田原はある意味恵まれている。大涌谷の噴火のようなことが起きて、商人は危機感を持ったけれど、行政には必死さが感じられない。もっとひどくならないと危機感を持たないのかもしれないけれど、体力があるうちに手を打たないと、取り返しがつかなくなってしまう。
決断する時には方法論を強く示して、批判を恐れないでほしいですね。 (了)
(※1)昨年5月3日に蒸気の暴噴があり、同6日に噴火警戒レベルが1から2に。6月29日には水蒸気噴火が起こり、噴火警戒レベルが2から3に引き上げられた。現在のレベルは1。箱根ロープウェイも全線運行を再開している。
(※2)http://www.odawara-cci.or.jp/information/bijon.html
(※3)小田原市をはじめ八王子市や寄居町など9市2町が加盟する北条五代観光推進協議会で2013年5月に「北条五代大河ドラマ化」推進を宣言している。
(※4)新宿駅南口にある高速バスターミナルやタクシー乗降場などを集約した交通ターミナル。今年4月3日開業。
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