小田原市本町で昨年12月に創業したテクノロジー企業「SHIN4NY(シンフォニー)株式会社」。市が2022年4月に事務系オフィスの企業誘致を目的に新設した補助金制度を利用した起業第1号だ。これまで市は、工場や研究所の誘致で雇用創出や税収増を図ってきたが、新制度ではオフィスの賃料や改修費用、コワーキングスペースの利用料金などを補助して、製造業以外の民間企業の誘致を目指している。地域に新しい風を吹き込み活性化につなげようという狙いがあり、22年度では22件の補助金利用と、12社の誘致実績がある(うち市内での起業は2社)。
SHIN4NYは4人で創業したベンチャーで、それぞれが自分の会社を持つ社長だ。年齢は30〜50代で、バックグラウンドも多様。商社社長、コミュニティマネージャー、センシングやライン制御のエンジニアが、横浜のベンチャー企業成長促進拠点「SHINみなとみらい」で出会った。意気投合し話し合う中で、アイデアが生まれ「自分たちでやったらいいんじゃないか。大きなイノベーションを起こせる」と、22年3月頃に4人で起業に向け動き出した。
創業の地を小田原に決めた理由は「小田原市は心から応援して、創業に向け一緒に走ってくれた」と同社代表取締役の工藤春香さん(32)は話す。誘致した市産業政策課の白井直士さんは「オフィスの場所探しなど相談事があると、その日中に返していた」とスピード感を持って地域とのつなぎ役に努めた。
eスポーツで市と連携
小田原市と連携して取り組んだ事例が、昨年6月に同社が市内で主催したeスポーツ大会だ。小田原市では、22年度からeスポーツを観光誘客策として位置付け、大会を開催してきた。同社は発話音声の大きさや周波数を計測し、発話者の感情や場の熱狂度を可視化する技術を開発しており、ボイスチャットでコミュニケーションが行われるeスポーツでも応用できないかと検討し、市と連携して大会を開催した。実況者の声をマイクで拾い、リアルタイムで会場の熱狂度を独自の指数で可視化するなど、一定の成果を得られたという。同社はテクノロジーやつながりを生かし「声が主役となるところにアプローチして、人々の笑顔を増やし、ワクワクする世界をつくりたい」と抱負を語った。
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