2016年は、郷土の偉人・二宮尊徳没後160年にあたる。江戸の末期を生き、600もの村を立て直した尊徳の仕法は「報徳」と呼ばれた。人口減少・地方再生…現代の日本が抱える課題は、尊徳が過ごした時代に酷似している。ならば、尊徳と同じように立て直すことは可能なのではないだろうか。
「報徳」の言葉の由来は、尊徳が10年にも及んだ桜町復興の成果報告を、小田原藩主・大久保忠真にした際、忠真が「(尊徳の)方法は論語の『徳を以って徳に報いる(以徳報徳)』というやり方」と評したことからで、その後自らの仕法を「報徳」と呼ぶようになった。
尊徳は「荒地には荒地の徳があり、借金には借金の徳がある」と言っている。それぞれの徳を掘り起こし、連係させ、生産性を高め、循環性を効率化し、生活・生業の創造性と安定性を追求する作業が、報徳仕法の基本。それぞれの長所や潜在的な力を発揮させることで、災いも捉え方によっては徳に変えて見せた。
報徳生活の三要素勤労・分度・推譲
報徳の三原則は「勤労、分度、推譲」。
【勤労】は、生活の基本であり自助努力の大原則。同時に知恵を働かせて労働を効率化し、社会に役立つ成果を生み出すという自覚を重視する。
【分度】は、経済的には、収入の枠内で一定の余剰を残しながら支出を図る生活や経営の確立のこと。余剰は、明日の、来年のそして未来の生活、生産の発展と永安のための基礎資源となる。
【推譲】は、分度生活の中から生み出された余剰と余力の一部を、各人が分に応じて拠出。これが報徳資金になり、相互扶助、公共資本あるいは弱者、困窮者救済に宛てられ、家政再建、町村復興、国づくりが進められる。尊徳は桜町領復興にあたり、小田原の田畑家屋敷、家財を全て売り払い、それを仕法の資金として推譲した。
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