「これが”プロ”の景色か」――。2011年5月6日、小田原で結成された4人組ロックバンド「藍坊主(あおぼうず)」は、ロックの聖地・日本武道館のステージに立った。リーダーの藤森真一さん(34)は「『根拠のない自信』で突き進んできた」と結成からの16年を振り返る。
鴨宮駅近くの一角にひっそりと佇むLIVE HOUSE「姿麗人(しゃれいど)」。10帖程度のステージの、小さなライブハウスで、4人の高校1年生が出会う。
別々の高校に通いながらも、バンド活動に青春を捧げていた4人が打ち解けるのに時間はかからなかった。ライブや打ち上げなど、同じ時間を共有するうちに互いの音楽の方向性、感覚を知り、仲間は1つになっていった。
好きなアーティストの曲のコピーバンドとして活動していたが、音楽に対する情熱は誰よりも高かった彼らは、高校2年の春からオリジナル曲の制作にも取り組み始める。メンバーの一人が曲を作れば、「めちゃくちゃイイ曲、プロになれる」と絶賛しあった。
若さゆえの根拠なき自信とノリで突き進み、臆することなくエントリーした全国の高校生バンドが集う「横浜ハイスクールミュージックフェスティバル(YHMF)」。デモテープ審査、地方予選(ライブ演奏)をとんとん拍子で通過、横浜アリーナの大舞台に立つ最終20組に残った。
オリジナル曲『未成年』で準グランプリを手にし、さらに膨らんだ自信。「絶対にプロとしてやっていける」。高校卒業後、4人はその歩みを東京へと向けた。
だが、現実はそう甘くはなかった。友人や知人で必ず客席が埋まった小田原でのライブとは違い、観客は、ステージ上からでも数えられる程度。それでも腐らず、地道に活動を続け、ライブハウスは日に日に人で埋まっていくと、その活躍にレコード会社も目をつける。03年に「バディーレコーズ」でインディーズデビュー。勢いそのままに04年、『Mr.children』や『ゆず』らが名を連ねる「トイズファクトリー」と契約し、念願のメジャーデビューを果たした。
大きなバックボーンもあり、全国でのライブ活動やCD売上げも順調。5thアルバム『ミズカネ』はオリコンチャート10位、続く6thアルバム『ノクエィルカ』は9位を記録し、その名は一躍、全国区へ。
そしてメジャーデビューから7年後の11年5月、4人は日本武道館のステージに立った。「順風満帆のようだけど、曲がかけない、メンバーの入れ替えなど、さまざまな問題も発生した。だけど、その度に苦労をともにしてきた仲間や支えてくれる人が手を差し伸べてくれた」
小田原で誕生し、日本武道館でのワンマンライブも果たした「藍坊主」。さらなる飛躍を目指し、今年はレコード会社から独立し、「ルノレコーズ」を発足した。9月14日には、原点回帰となる自身8枚目のニューアルバム『Luno』をリリースしたばかり。新たな一歩を踏み出した”裸の藍坊主”にとって、これからが本当の勝負の時なのかも知れない。
音楽が持つ力、音楽が見せる夢。4人が育った場所、出会った場所、そして、愛する場所『小田原』。「思い続ければ夢は叶う」というメッセージを伝えるため、9月24日(土)、小田原イズムのステージに立つ。
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