お昼寝から目覚めた乳幼児連れの親子が、ちらほらと増え始める昼下がりの荻窪公民館。その元気な声に呼び寄せられるかのように、「こんにちは〜」と近隣の高齢者も嬉しそうに顔をのぞかせる――。
主に荻窪公民館を会場に開催されている「移動型児童館」。子育てと仕事を両立する母親らで組織される「おだわら児童館連合」が昨年4月から始めた取り組みだ。
発起人は、3年前に東京から小田原へ転居してきた岩瀬祐子さん(32)。見知らぬ土地で地域とのつながりを求めて子育て支援センターを活用していたが、乳児と幼児が一緒に過ごせない時間帯もあった。3人の子どもを育てる岩瀬さんは、「上の子を家に残して出かけるわけにはいかない」と、不便さも感じたという。
岩瀬さんが生まれ育った杉並区には、各地にあるという児童館。利用対象は0〜18歳と幅広く、異年齢の子どもたちがうまく住み分け、時に関わりあいながら過ごせる居場所だった。「小田原にもあんな施設があればよいのに」。そんな思いに共感する仲間と、公民館を借りて昨年4月に始めた児童館。初回から約10組の親子が集まり、以来、週2回のペースで開催している。
児童館の活用を推進する児童健全育成推進財団(東京都渋谷区)によると、児童館とは健全な遊びを通じて子どもの能力の発達を援助することなどを目的とした、厚生労働省所轄の児童福祉施設。全国に約4700カ所あり、常駐する職員らがイベント等を企画するだけでなく、地域の力も借りて運営するのが特徴。小田原の移動型児童館でも、子ども好きな地域の高齢者らが工作を教えたり、母親の子育て相談に応じてくれるなど、支援の輪が広がる。
ボランティアとして遊び相手を務める茂木恵さん(22)と井村菜々美さん(21)は、「子どもと一緒にいるだけで仕事の疲れも吹き飛ぶ」と嬉しそう。市内で飲食店を経営する萩原和之さん(39)は、「仕込みの合間にちょくちょく顔を出す。ママさんたちも頑張っているしね」と、お菓子を差し入れていた。
岩瀬さんは、「さまざまな年齢や立場の人たちと関わりあえることは、子どもたちにも、親にも貴重な場。市内各地で開催できたら」と抱負を話していた。児童館の問合せは【携帯電話】090・9323・9434へ。
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