小田原・箱根・湯河原・真鶴版
公開：2017年3月4日
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自身もプレーして選手の手本となる。手前が廣末君
高校サッカー最高峰の大会「高円宮杯」、「選手権大会」で二冠を達成した青森山田高。強さの裏にはＧＫコーチとしてチームを支える大久保隆一郎さん＝人物風土記で紹介＝の存在がある。
中等部社会科教諭として学校業務をこなし、放課後になると選手とグラウンドに飛び出し、ＧＫの育成に情熱を注ぐ。名将・黒田剛監督からセットプレー時のポジショニングなども一任され、数百試合に及ぶ過去の映像をチェックし、研究も欠かさない。試合前となれば、映像を作り、相手チームを細部まで分析。ライバル校の監督から情報収集を行うなど勝利にこだわる姿勢と準備に余念がない。
青森の冬は寒い。グラウンド一面に雪が積もることも日常。しかし、選手は雪上でボールを追い、走り続ける。「倒れる選手もいる」というが、決まってそんなとき、「自分の１００％を出せているのか。辛い時こそ自分の本心が出るんだ。両親に応援されて山田にいることを忘れるな」と檄を飛ばし、奮い立たせる。この姿勢こそが名門の底力を培う。
初のプロ選手誕生へ
指導４年目を迎えた春、中学時代はＦＣ東京の下部組織に所属していた廣末陸君が入学。指導する中でもちろん選手との衝突は生まれる。「なぜ右なんですか、左に飛んだ方がいい」。ある時、廣末君が疑問を呈したことがあった。大久保さんは気づいた。「選手の意見を聞き入れ、伸ばすところ、褒めることは徹底しなければ」
コーチングの手応えを掴み、臨んだ高円宮杯プレミアリーグイーストでは初優勝。サンフレッチェ広島ユースとのチャンピオンシップも制し、高校世代日本一になった。参戦６年目での快挙に「Ｊのクラブの強さが目立つ大会で、失点しないという山田のサッカーを表現できた」。
選手権大会では、セットプレーから失点を許し、完全優勝の夢は終えた。しかし選手、監督、スタッフは「失点をプラスに考えよう」と前を向き、決勝戦では前橋育英高に５―０と圧倒したスコアで頂点へと駆け上がった。
「あんなこと言う奴じゃないんですけどね。我が強く、食いかかってくるようなパワー集団だった」と振り返った大会後、廣末君から感謝の言葉を口にされたという。はにかみながらも培ってきたものが形となって現れた瞬間だった。廣末君は今春、ＦＣ東京に入団した。マンツーマンで指導した選手では初のプロの誕生だ。「指導者として陸から学ぶことがたくさんあった。応援してくれている人に結果で恩返しできる選手になってほしい。私もいずれはハングリー精神や根性を鍛えられた小田原のために貢献したい」。遠く離れた雪国で生まれた全国の頂点。無限大の夢はまだ始まったばかりだ。
熱い気持ちで生まれた絆
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