清閑亭、小田原文学館、松永記念館など、数々の歴史ある建造物が残る小田原市。登録有形文化財として指定を受けるものだけでなく、旧武家屋敷が並ぶ西海子小路やかまぼこ通りなども風情ある街並みを演出する。その景観保持に一役買っているのが、市内に点在する丸型ポストだ。
赤い鉄製の円筒形で、どこかレトロな雰囲気を醸し出す丸型ポスト。正式名称は「郵便差出箱1号丸型」で、戦後まもない1949年に初めて登場した。
当時の公文書などはB5サイズが主流。だが時代の変遷とともに大型化し、差入口に入らないA4の郵便物も次第に増えた。こうした背景もあって丸型ポストの生産は69年で終了。お役御免となったポストは、全国の幼稚園や小学校などに教材として寄贈されるものも多かった。
後継は角型ポスト。差入口が広いことから、ビジネス利用の多い都市部を中心に需要が高かった。しかし一斉に丸型が撤廃されたわけではなく、引き続き使用されるケースも珍しくなかったが、老朽化などでその数は年々減少。そんななか、小田原市内には今も現役として使われている丸型が14カ所に残る。
ポストの種別による個数について正式な資料はないが、「小田原は全国的にみても間違いなく丸型が多い地域」と話す若林正浩さん。ネット上で組織する「丸型ポストの会」の世話人で、各地のポストを見て歩いてきた一人だ。5月には小田原を会場に、「丸型ポストフェスティバル」を開催。全国から集った約40人のマニアがポストと城下町の街並みのコラボレーションを楽しんだ。被写体としての人気も高く、蓋を帽子、差入口の丸い枠を顔に見立て、「シルエットが人みたい。温かく見守ってくれているよう」と魅力を語る。
進行役を務めた川瀬潤さんは、酒匂郵便局の5代目局長。自身も会のメンバーで、「手書きの手紙なら、こちらに投函した方が思いも伝わる気がする」と丸型をこよなく愛する。「古い街並みにもマッチする。いつかは、小田原城を背景に撮影できる場所に設置できたら」というのが願いだ。
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