鬼も18 番茶も出花 ヘクソカズラも花盛り 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
なんとも可哀想なネーミングですね。しかし万葉集の時代から「ヘクソカズラ」で詠まれていました。花は小さな白い筒状で、筒の中は鮮やかな紅色をした美しく可愛らしい花なのに…。「可愛〜い!」といって鼻を近づけたとたん、「うーん臭い!」。まるでおならを嗅いだような悪臭を放つため、この名がつけられました。古くは「屁臭(へく)さ」で表し、訛(なま)って「屁糞(へく)そ」になったと言います。「かずら」は蔓(つる)のことで、この臭いは花以外の葉、蔓、実にもつきまとっています。このような悪臭を持つのは、虫たちに食べられないための自衛手段で、長い年月をかけて獲得してきたものです。わざわざ香水で男性を魅了させる女性とは逆に、悪い虫を追い払う働きがあります。
後日、可哀想なこの花に「早乙女(さおとめ)花(はな)」(花の形が田植娘の早乙女が被っている笠に似る)とか「灸(やいと)花(ばな)」といった別名がつけられましたが、意地悪な世間は、いまだに「ヘクソカズラ」を使いたがっているようです。
しかし、自然界は不思議なもので、ヘクソカズラの悪臭をものとせず食べてしまう昆虫「ヘクソカズラヒゲナガアブラムシ」が現れました。この悪臭の成分を自分の体内に取り入れ、鳥などの天敵から身を守っているのです。いやはや自然界の仕組みは、いつ見ても驚くことばかりです。
区内のどこでも見ることができます。
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