カラスとスズメの知恵比べ 「カラスノエンドウ」の戦略とは 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
名の由来は莢(さや)が黒いので「黒い野エンドウ」の意味です。読み方は、(カラス)+(野エンドウ)であって、(カラスの)+(エンドウ)ではありません。
葉の付け根に蜜腺を持った2つの黒い斑点があり、ここから甘い蜜を出し、アリを呼び寄せ、葉を食べる虫たちを追い払う用心棒役にしています。持ちつ持たれつの関係ですが、この用心棒を寝返らせる「アリマキ」が現れました。アリマキはカラスノエンドウの茎から糖分を吸い、体内に貯め、その余りを体外へ排出しています。そこでアリは、葉よりも多く蜜を出すアリマキの虜になってしまいました。カラスノエンドウは、アリには裏切られ、アリマキには糖分を横取りされ、踏んだり蹴ったりです。まさに報酬が物を言うビジネスライクの関係になってしまいました。
カラスノエンドウより小型の「スズメノエンドウ」は、自分の体内に抗菌や抗酸化作用のある物質を持ち、病原菌や害虫から身を守っています。こうして見ると、カラスとスズメの自衛策に対する知恵比べは、どうやらスズメに軍配が上がりそうですね。
なお、カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間型に「カスマグサ」という種類があり、「カ」と「ス」の間(ま)から、「カスマグサ」と名付けられました。カラスノエンドウは後の2種に比べ、極めてポピュラーな種です。
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