ツクシ誰の子、スギナの子 閻魔大王と出会った「スギナ」 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
「土筆煮て 飯くふ 夜の台所」(正岡子規)
春の暖かな日差しを受けて、野にはツクシが顔を出してきました。ツクシとスギナは親子関係と言えなくはないのですが、ツクシは決してスギナの子であるとは言えません。スギナはシダ植物の仲間で、胞子を作ります。ツクシはその胞子を作る器官で、両者は地下茎で繋がっています。ツクシの頭の部分には、約200万個の胞子が入っています。こう考えると、親子関係はむしろその逆と言えるかもしれません。
子どもの頃、スギナの節の1か所を引き抜き、そっと元に戻して友達に「どこを継いだ?」と言って遊んだことがあります。スギナの由来の一つには、この「継ぎ菜」からきています。
スギナの祖先は、3億年前に大繁栄した当時数十メートルの巨大植物で、密生して深い森を形成していました。多くは寒冷や乾燥等の大きな変化に対応できず絶滅し、石炭となり後世に残りました。その後生き延びたスギナは危機管理を怠らず、地下茎を大きく発達させて、今に至っています。
戦争末期、広島に原爆が投下された焼け野原に、真っ先に緑を取り戻したのはスギナでした。地下茎が熱線から免れたのです。地下茎は地の底まで伸び、閻魔(えん ま)大王の囲炉裏(い ろ り)の自在鉤(かぎ)になったと言われるくらい、深く伸びています。雑草とはいえ、地獄で閻魔様に会見した植物の強みと言えます。
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