茂って藪を枯らす 伸び放題の「ヤブガラシ」 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
都会の中で生育するヤブガラシは、ところかまわず蔓(つる)を伸ばし、垣根、塀、石垣、窓枠、庭木、ときには家の中まで入り込んでくるという、大変始末の悪い蔓性の多年草です。巻きひげを伸ばし、何にでも巻きつき、蔓を伸ばすための足掛かりとします。この巻きひげは茎が変化したもので、カラスノエンドウなどの巻きひげ(葉が変化したもの)とは器官が異なります。このように「茂って藪(やぶ)を枯らす」という意味から名前がつけられました。
また蔓が家を覆ってしまうと貧乏になるということから、別名「ビンボウカズラ」とも言います。地下茎は地中深く発達し、生命力は非常に旺盛です。
花は萼(がく)を持たず、緑色の4枚の小さな花弁があり、朝開花すると直ぐに雄蕊(おしべ)と花弁を落としてしまうという変わった花です。花弁が落ちると、平たい皿状をした黄赤色の花盤と雌蕊だけになり、その後、花盤は淡紅色へと変わります。このように豊かな色彩を示すため、花弁が落ちても様々な昆虫たちは訪れてきます。蜜を求めてくる昆虫は、チョウやハチの仲間が多く、その種類も多種多様です。特にスズメバチやアシナガバチがよく訪れるので注意してください。
葉と蔓の様子が、薬用や自然食品として人気の高いアマチャヅルに似ているため、以前悪徳業者の中には、このヤブガラシを混ぜて売っていたこともありました。
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