涼しさを呼ぶ夏の花 水中の女神「スイレン」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
最終回は水中の女神「スイレン」を取り上げました。スイレンといえばモネの名画を思い浮かべる人も多いと思います。夏、池の水面に浮かぶ純白の大きい花を見ると、暑さも忘れ、すがすがしい気持ちになります。漢字で、「睡蓮」または「水連」とありますが、スイレンは「眠るハス」の意味を持つので、「睡蓮」が正しいでしょう。
スイレンは世界に広く分布しており、種類としては熱帯スイレンが135種、耐寒性スイレンが5〜6種存在しています。そのうち日本には耐寒性スイレンのI種、「ヒツジグサ」が生育しています。1800年代後半以降、これらの種からたくさんの品種(園芸種)が改良され、花色も赤、白、黄、ピンクといった色彩豊かになりましたが、青と紫はまだできていません。日本でも明治後半にヒツジグサから様々な品種を作り、現在では約50種あります。
区内で見られる種は、ほとんど園芸種で、栽培品を除いて野生のヒツジグサは自生していません。ヒツジグサは未(ひつじ)の刻(14時)に開花するのでその名がありますが、実際には気温や水温により一定していません。スイレンの仲間は、最初に出る葉は水中葉ですが、次から出る葉は常に水面に浮かぶように葉柄の長さを伸縮させ調節しています。また花が咲き終わると、水中に潜り実を結び、熟すと浮袋のついた種子が水面に出てきます。この袋が腐ると、中の種子は水底に沈んで発芽します。
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