金沢町に住む山田善一さん(83)が約25年にわたり写し取った道しるべなどの拓本約70点が現在開催中の県立金沢文庫の企画展で展示されている。江戸時代、多くの旅人が訪れた金沢の面影をみることができる。展示は2月16日まで。
以前から歴史に興味を持っていた山田さんが拓本と巡り合ったのは1989年、金沢区役所主催の歴史講習会に参加した時のこと。以来、「自分の記録にしよう」と、身近な石碑や道しるべを取りはじめた。
拓本とは、石などに刻まれた文字や図柄を、墨を使って写し取る方法。時間がたち風化した文字や模様を浮き上がらせ読みやすくし、記録することができる。魚拓と違い、対象物を汚すことはない。「湿拓」(しったく)という方法では、和紙を石碑にあて刷毛で湿らせてはりつけ、上から墨汁を含ませたタンポで軽くたたいて凹凸を写し取る。山田さんが「1つの石碑で4時間ぐらいかかったこともある」というほど、根気のいる作業だ。「自分は短気な方だけど、これに関しては辛抱強くやれるんです」と笑う。
山田さんがこれまで写し取った拓本は211。「上手く写し取れた時は、『ああ、やったな』と満足感を味わうことができる」とその醍醐味を話す。
これらの拓本は、金沢文庫へ寄贈される予定だ。「紙なので、自分で持っていたらどうなるか分からない。金沢文庫で保存していただけるのなら幸せ」と山田さん。金沢文庫の学芸員・山地純さんは「山田さんの拓本はすべて『いつ、どこで』というデータがちゃんとあって、信ぴょう性が高い。展示に耐えうるもの」と評価する。
身近な文化財知って
今回の企画展では、区内に点在する江戸時代に作られた石標を中心に展示している。「今では失われてしまった街道や社寺の存在を示す遺品。江戸の旅人が見たであろう景色が偲ばれる」と担当する山地さん。金沢道の出発点である保土ヶ谷金沢横町の道しるべから始まり、能見堂の石碑、金沢の観音霊場の石碑などが続く。「地元民にこそ見てほしい展示。身近なところにも文化財があることを知って欲しい」と話す。
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