市立犬蔵中学校(小沼謙一郎校長)3年の土橋(どばし)竜治君(15)が、自宅で心肺停止状態になった父親に蘇生術を施して命を繋いだ。竜治君の勇気ある行動に対し、宮前消防署の金子智哉署長は5月31日に表彰状を授与。学校が授業で行っている救命講習が奏功した。
4月9日の夜、竜治君はソファで寝ている父親、健治さん(58)の異変に気付いた。「片目が白目になっていて、声をかけても返事がなくて、怖かった」。風呂場にいた母親に父の異変を伝えた竜治君がすぐさまとった行動が心肺蘇生術「胸骨圧迫」だった。
「お父さんを助けたい。お父さんに恩返ししたい」。その一心で勝手に手が動いた。救急隊が駆け付ける10分程度の間、竜治君は胸骨圧迫を続けた。救急隊が到着し、除細動を3回実施したところ心肺が再開。病院に到着する際には意識が回復し、命が救われた。
健治さんは後遺症もなく回復している。「病院の医師から『息子さんの行動がなければ命を落としていた。スーパー中学生ですね』と言われました。これからは息子に助けられた命を大切にしていきたい」と健治さんは話す。
学校の救命講習が奏功
竜治君の心肺蘇生術は、学校が授業の一環で実施している救命講習で身に付けたもの。宮前消防署が協力して署員が講師を務めているもので、区内中学校で実施しているのは犬蔵中のみ。竜治君は昨年12月に3時間の講習を受けていた。
宮前消防署の金子智哉署長は「講習で習得した成果を活かし、勇気ある行動をとってくれた。心肺蘇生は身内からが大切。この行動を高く評価し表彰した」と竜治君の行動をたたえた。
同署の菅谷由紀夫さんは「心肺停止は家庭で起こることが多く、家族が心肺蘇生できないというケースが多い。救急隊員が駆け付けても手遅れになってしまうことがある。竜治君の行動は救急隊員にとっても力になる」と話す。
犬蔵中学校は「生命・いのちを尊重し、生きる力を育む」を教育目標に掲げており、以前から救命講習を授業の一環で実施している。しかし、今年度から消防署の救命講習は外部に事業委託されており、継続して救命講習が実施できるかは不透明だ。小沼校長は「土橋君は落ち着いて適切な対応ができて素晴らしい。救命講習は意義のあること。今後も続けられるようにしていきたい」と話した。
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