川崎市の特産品として知られる多摩川梨の1つ、「宮前梨」が旬を迎え、区内6園で収穫、直売が開始された。今年は7月に入ってから気温が上がったため、糖度も実の大きさも上々の出来だという。
県の名産100選、かわさき農産物ブランド「かわさきそだち」にも選ばれる川崎産の「多摩川梨」。
市内での梨栽培の歴史は古く、江戸時代初期に川崎大師河原(現在の川崎区日の出町)周辺で行なわれていた記録がある。本格的に栽培が始まったのは今から約250年前。1893年には、大師河原に住む当麻辰次郎氏が新種の梨を発見。自身の梨園で栽培していたことから、その屋号にちなんで「長十郎梨」と名付けられ、多摩川梨のルーツとなった。
その後、多摩川周辺を中心に川崎各地へと栽培地が広がり、大正時代の終わり頃には市内の梨栽培面積は200ヘクタールを超え、関東屈指の梨の産地となった。しかし、昭和初期にかけて川崎が工業都市として発展したことから梨園は衰退。1927年に生産者が第一次連合会を結成し、生産・流通・宣伝などを協力して行うようになった。この時点で市内で生産される梨を総称して「多摩川梨」と呼ぶようになった。現在は、中原、高津、宮前、多摩、麻生区で栽培されている。
多摩川梨の1つ、「宮前梨」は1950年代に有馬で栽培が始まった。栽培技術の向上や「幸水」「豊水」といった人気商品の登場、「もぎたて、直売」でファンを増やしてきた。
現在は有馬、野川にある6園と中原区の2園で栽培。「宮前梨組合」を発足させ、味はもちろん安全安心の宮前梨の提供を目指している。
区内有馬で「持田農園」を営む持田芳男さん(63)は「早生梨をみる限りでは生育状況も順調。ここ最近気温が上がったこともあり、糖度、大きさともに上々のでき」と話す。
同園では強い甘みとみずみずしさが特徴の「幸水」の収穫がすでに始まっており、続いて「豊水」「あきづき」などの品種が8月下旬から9月上旬にかけて旬を迎えるという。
各梨園でも収穫、直売が開始され、品種によっては9月下旬から10月上旬まで楽しめるものもある。予約や地方発送も可能。
持田さんは「歴史ある宮前梨をぜひ多くの方に楽しんでいただければ」と話している。
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