台風18号の影響による崖崩れで死者2人が出たことを受け、横浜市は市内の土砂災害警戒区域内にある危険崖地の現地調査を年間400カ所から3000カ所に拡大する方針を決めた。2014年度中に1000カ所を調査し、危険崖地対策を推進していく考えだ。
市内には、土砂災害警戒区域内で崖崩れや土砂災害など二次災害の危険性がある高さ5m以上、傾斜30度以上の崖地が9815カ所存在している。市は6月から建築局の職員4人体制でこの崖地の安全確認パトロールを定期的に実施していた。しかし、少人数では1カ月に40カ所、年間でも400カ所程度の調査が限界で、横浜市会でも「すべての崖の調査終了まで25年かかる」と批判の声もあがっていた。さらに、10月の台風18号で緑区と中区の土砂災害警戒区域で崖崩れが起こり、死者も発生した。
これを受け市は急きょ計画を見直し、専門家の協力を得るかたちで年間3000カ所に調査件数を拡大することに決めた。今年度中に1割にあたる1000カ所の崖地を調べ、2017年度までに調査を終了させたい方針だ。市建築局担当者は「二度と死亡事故が発生しないように早急に取り組みたい」と話している。
航空測量を検討
これまでの安全パトロールでは現場の目視や崖地下の人家の有無などを主に確認。崖所有者が留守で敷地に入れないケースや建物に崖地が迫っている場合など平地からの調査が困難な場所も多く、調査方法が課題となっていた。そこで、植生が生息している崖などの地形データが把握できる航空測量も検討している。
また、今後の現地調査では本格的な崖地の危険度判定を実施。斜面の形状や勾配、斜面からの湧水、表土の深さなど24項目を細かく調べ、A〜Dの4段階で危険度をランク分けする。さらに危険度の高い崖地については崖所有者に市の補助事業を紹介し改善を促す予定だ。
違法盛り土対策も
緑区白山の崖地では業者による違法な盛り土が原因で死者1人が発生。依然として18世帯40人が避難をしている状況だ。このような宅地造成等規制法違反の場所が市内に243カ所あり、こちらの対策も課題が残る。市は盛り土の所有者を呼び出して是正を促しているが、資金面の問題などを理由に改善にはいたっていない。市の担当者は、今後の予定について「土砂災害警戒区域内や盛り土など、危険箇所の優先順位をつけて調査し、改善を促したい」と話す。
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