横浜市は国が保有する医療ビッグデータ「ナショナルデータベース」(NDB)を活用し、市域のがん治療に関する医療実態を把握することで、より実践的ながん対策に乗り出す。全国の市町村でNDBデータの提供を受けるのは横浜市が初めて。
横浜市では2014年に「がん撲滅対策推進条例」を施行し、がんの早期発見や予防、医療体制の整備などを進めてきたが、施策立案する上で基礎データの不足が課題となっていた。今回の動きはデータを分析することで、がん患者を取り巻く環境や実態の把握を進め、より実践的な対策を講じることを目的としている。
NDBは診療報酬請求に関するレセプトデータや特定健診などに関するデータをまとめたもので、国が匿名化し一元的に管理している。昨年9月時点で約103億4千万件のレセプトデータと1億4200万件の特定健診・保健指導データが収載されている。
厚生労働省は今年6月、それまで国の行政機関や都道府県、研究機関に限定されていた提供対象を市町村まで拡大。この制度改正を受け、市は市内のがん治療に関するレセプトデータの提供を国に申請し、基礎自治体としては全国で初めて承認を得た。
5万人分、60万件
提供を受けるのは14年度、15年度のデータ。市内の医療機関などを利用したがん患者およそ5万人分で、性別や年代、外来通院頻度、使用している抗がん剤の種類や投与回数など60万件に及ぶ。
これまでは全国一律の汎用的な統計データやアンケート調査をもとに施策を立案してきたが、提供を受けるデータを分析・解析することで今後は実態に沿った施策立案につなげたい考え。市医療局では「客観的なデータを分析することで、実態把握が進み、立体的な施策立案が可能となり、より適切な予算配分が実現でき、総合的ながん対策の推進につながる」としている。
統計学専門家が分析
分析には大量のデータに対する統計分析の知識・技術、医学的知識が必要となる。市は横浜市立大学と連携協定を締結。国内のデータサイエンスの第一人者で、厚労省の先進医療専門部会のメンバーでもある山中竹春教授(医学部臨床統計学教室)をはじめとした、専門家と協力しながらNDBの分析を進めていく。
同局によると年内には国からデータ提供を受け、来春までに分析を終わらせる予定。その後、解析を進め市のがん対策に活用する。
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