大正末期〜昭和の北山田から 第27回 都筑区の歴史を紐解く 文・絵 男全冨雄(『望郷』から引用)
東京見学
小学校に上がる前年、父が「男の子は軍人になれ、そして国の為に殉ずる人になれ」と、社会見学として東京に叔母さんと一緒に連れていってくれた。皇居、近衛師団、靖国神社、明治神宮と強行軍だった。初めて見る都会と乗り物に酔い、すっかりくたびれてしまい、見学どころではなかった。
ただし近衛師団は今でもはっきり記憶にある。衛門をくぐり、兵舎の角までくると、疾風のように騎兵が二頭駆け去っていった。「かっこいいなぁ」と子供心に思った。兵舎の中に入ると階段を二、三名の兵士が駆け下りてきて、階段の途中で敬礼されたのでびっくりした。それもそのはず、父は教育召集で三カ月入隊していたそうです。現役除隊後、兵器の進歩が激しいので時々召集して新兵器の実習訓練が行われるのが教育召集だそうです。
兵隊さんの案内で、酒保に行きご馳走になったが、その当時は貴重品だった腕時計がたくさん並んで売られているのが印象的だった。
今では時計は使い捨ての時代、ずい分かわったものだ。
皇居も靖国神社も幼い私には長い砂利道を歩かされた記憶が強く、乗りつけない車と、田舎者ゆえガソリンの匂いに酔ってしまい、見学どころではなかった。
代々木の原で凧上げに興ずる子供たちをぼんやり見つめ、なぜ皆気持ち悪くならないのだろうと思って、早く帰ることした考えていなかった。
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