連載 介護の「本質」考えてみませんか 第5回 介護の現状【4】
今回は、前回の「問題行動・周辺症状」について少し書かせていただこうと思います。
認知症には「中核症状」といわれる症状があります。これは、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、理解・判断力の低下など「認知機能の障害」です。
この中核症状の周辺に「BPSD=行動・心理症状」があり、具体的には不安・妄想・焦燥感・暴言・暴力・徘徊・幻視などがあります。
周囲の方がかかわり方に頭を抱えてしまうことで問題と感じてしまうことから「問題行動」と言われたり、中核症状の周辺にある事から「周辺症状」と言われてきましたが、かかわり方が望ましくないことや環境の変化などが影響して出てしまう症状から「行動・心理症状」と言われるようになりました。
さらに最近では「適応行動」とも言われています。これは、本人が感じている「不安・不快・恐怖」を自分なりに解決しようとしている行動ということになります。
ここで気が付いていただきたいことが、不安や不快・恐怖を何とかしたいと思った行動が第三者から「暴言や暴力」と言われてしまっているという現状です。
嫌なことをされれば「やめて」ということはありますよね?その言い方が、たまたま「やめろー」などと大きな声になってしまっているだけで「暴言」と言われる現状、さらに、何かをされる恐怖から「触らないで」と手を払う行為が「暴力」と言われてしまうのはおかしな話です。
そして、この「暴言や暴力」と言われてしまう行為があると「○○拒否」と言われてしまうことがあります。認知症になってしまったから「嫌がる行為=○○拒否」というのはおかしいのではないでしょうか。認知症になってしまっていなければ簡単に「拒否行為だ」などとは言われることはないはずです。
例えば、「入浴拒否」です。入浴は好き嫌いがあります。また、その時の気分もあります。入りたくない時に何回も「お風呂入ってください」と繰り返されれば「うるさい。入らん」となるのは当然で、拒否しているのではなく「入浴のタイミングではなかっただけ」「入浴することを選ばなかった」ということなのです。
「○○拒否」という言葉は、第三者が思いを押し付け、行動を管理しているだけで、「なぜそのことを選ばなかったのか」の理由を探そうとしていないことです。さらには、押し付けや望ましくないかかわりで「不安・不快・恐怖」を与え続けているかかわりになってしまいますので、早期の段階から「なぜ?」という部分と向き合っていく事が大切になります。
|
|
|
|
|
|