冬の花として有名なシクラメン。区内にも数件のシクラメン農家がある。その一つ、50年以上前から施設園芸に取り組む小泉恵右さん(75)=小泉園芸・菅田町1315=のハウスでは、11月下旬から12月上旬まで出荷のピークを迎える。今シーズンは手間暇をかけて育てた約4千鉢を市場などに送り出す予定だ。
例年この時期になると、常連客からの注文が舞い込み、発送準備に多忙を極める。小泉園芸では大田市場へ出荷するほか、22日からは直売も開始する。今年は夏の猛暑で苦労したものの、花の出来自体は「例年並み」だという。
手間惜しまず「葉組み」3回
1964(昭和39)年創業。地元農家の4代目だった恵右さんが、温室栽培を始めようと興した会社だ。「近隣の農家さんより田畑が少なかったので、1年を通じて効率的に活用できる施設園芸に魅力を感じた」と「転身」のきっかけを話す。
「歌謡曲『シクラメンのかほり』が流行った70年代後半は、価格が5倍くらい上がった」とシクラメンブームを振り返る。約150坪だった施設用地は約50年をかけて約600坪に増加、ハウスも10棟を数えるまでになった。
同社では野菜苗なども栽培しているため、シクラメンの種まきを一般より1カ月以上遅い12月に行っている。短い期間で成長する理由については「自分でも分からない」と笑う。栽培のこだわりは、葉が重ならないように整える「葉組み」だ。「この作業を最低3回。芽が生育するようになり綺麗に咲くから」。こうした手間暇を惜しまないことで、地域の品評会で入賞するほどの質を保ってきた。
落ち葉や牛糞など、有機肥料の割合を増やす取り組みを進め、市環境保全型農業推進者にも認定された。現在は、息子夫婦と従業員の5人で経営を切り盛りする。「できるだけ現役でがんばりながら、後継者を育てていきたい」と今後の抱負を語った。
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