連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 ㊺感染症への備え
御蔵島は東京の屋久島と呼ばれるほど、巨木をはじめ多くの植物を育む大量の水が湧き出る島です。
イルカウオッチング舟で断崖絶壁の島肌を背にしばらく進むと、島の南端にある白ひげの滝の下に着きます。舟の先端や後方に、子育て中のイルカがゆったりと泳いでいるのが観察できます。
舟のエンジンを止めると、親子のイルカが周囲をぐるぐると回りはじめました。僕らはシュノーケルを口にくわえて入水。プカプカとゆっくりイルカと遊んでいましたが、急にイルカたちは滝の方へ行ってしまいました。しばらく魚たちと浮いていると、親子のイルカがまた目の前に現れました。急いで消え去ったときよりも、どこか気持ちよさそうにして、肌が美しく黒光りして輝いているようです。
さて、滝の下で彼らはいったい何をしてきたのでしょうか。
私はみんなに次のように説明しています。まず、外洋でからだの表面に付いた寄生虫や雑菌などを、御山(851m)から流れ落ちる真水で洗って汚れた表皮を洗浄しています。次に、滝の水中でも取れない付着物は、滝つぼの下に多い大小の玉石にこすり付けて落としています。まるで私たち人間が玉石を敷いた岩盤浴施設で、汚れた汗を流すように見えます。
御蔵島のイルカたちは遠い昔からこうした自然を利用して体をケアし、感染症の予防をしてきたのかもしれません。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一(問)iwashige@gmail.com】
|
|
|
|
|
|