横浜翠嵐高校OBの鈴木孝庸さん(70)は、2015年11月から「一部平家の会」という『平家物語』を物語順に琵琶語りする大事業を月2回、同校で行っている。19年3月には全編を語り終える予定だ。
「祇園精舎乃鐘の聲――」の書き出しが有名な『平家物語』。平家の栄枯盛衰を琵琶法師が語り書物に収めたもので、鎌倉時代に成立した軍記物語として知られている。
鈴木さんは、平家物語を琵琶で語る「平曲」を継承し、15年11月15日から全編12巻を語り終える「一部平家」と呼ばれる一大事業に挑戦している。新潟大学名誉教授の肩書を持ち、最近までは教壇にも立っていたため、月2回の「一部平家の会」のために新潟県から駆け付ける。現代に入り、「一部平家」を成し遂げたのは、2人しかいない。
同高校を1966年に卒業し、72年から81年までは国語科の教師をしていた。現在、同校の青木健総括教諭が鈴木さんの教え子であったことから、会を開く場所を提供した。鈴木さんは「会を開ける場所があるからこそ、この事業に挑戦できる。青木先生には感謝でいっぱいだ」と話す。
鈴木さんが中学生の時、『平家物語』の文章が持つリズム感に魅力を感じ、興味を持ち始めた。そのまま古典文学の世界に入り、同校で教鞭をとった後には、新潟大学で日本古典文学を専攻。同大学の名誉教授まで登りつめた。その中で出会ったのが、「一部平家」を達成している橋本敏江さんだ。
師の想いを実現へ
「物語を知るには実際、語ってみなければわからないよ」と橋本さんが助言したことから、弟子入りすることに。声の出し方から琵琶の弾き方まで本格的に習った。「殷を踏む独特の声の出し方には苦労した」と振り返る。橋本さんが亡くなった後から「一部平家の会」が始まった。鈴木さんは「平曲を語る人を広めてほしい」という師匠の願いを実現するために、無料で会を開いている。
5月12日の会には、鈴木さんの教え子や『平家物語』に興味を持つ10人程が集まった。物語は第9巻に突入している。1巻を語り終えるには、だいたい2日半必要だという。鈴木さんは「体調管理に気を付けて、来年3月に達成できるように頑張りたい」と意気込む。次回は5月26日を予定している。詳細はhttp://www.facebook.com/ichibuheike。
神奈川区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|