腎移植には死亡者から腎臓の提供を受ける献腎移植と家族や身内から提供を受ける生体腎移植の2種類がある。日本臓器移植ネットワークの献腎移植希望登録者は全国で1万2千872人(10年8月現在)。登録後、移植を受けられるまでの平均待機年数は15年と長い。待機中に病気が進行して死亡したり、移植を受けられなくなったりするケースも多いという。移植によって人生がどう変わるのか06年9月、生体腎移植を受けたKさんに話を聞いた。
区内で働くKさんは幸運にも移植を決意してから4ヵ月で母親から腎臓を提供してもらい移植を受けた。Kさんの病名は糖尿病性腎症による末期腎不全。糖尿病の合併症のひとつで33歳から約3年間、腎臓の代わりに老廃物や余分な水分を人工的にろ過する透析を受けていた。治療は週3回。「透析中心の生活になった。仕事やプライベートに大きな制限ができ、当たり前のことができないストレスで苦しかった」と振り返るKさん。「移植」という選択肢を思い出したのはそんな頃だった。
Kさんは聖マリアンナ医科大学病院が移植を行っていることを知り、母と一緒に外来を訪れた。
担当医は腎泌尿器外科教授の力石辰也先生。移植という言葉の重みに恐れもあった。しかし、「力石先生はとても分かりやすく移植の話をしてくれた」。不安だった気持ちも少しずつ減り、次第に現実味を帯びてきた。
力石先生から「移植したら何をしたい?」と聞かれ、「それまでは出来ないことが多かった。でも、移植をすればあれがしたいとかここに行きたいといった、誰もが普通に思う事を私も考えて良いと分かって嬉しかった」と話す。移植に踏み切るか迷ったが、元気になることで感謝の気持ちを返していこうと決め、手術を受けることにした。
移植でもらった時間大切に
術後は順調に回復。翌日からリハビリに入り、1ヵ月ほどで退院した。職場にも2ヵ月で復帰できた。
「最初の頃は検査数値の変動が気になり、一喜一憂していた」という。力石先生に相談すると、「多少の変動は気にしないで大丈夫」と言われ、次第に割り切れるようになっていった。
「免疫抑制剤を5〜6種類飲み続けていくのは正直しんどい。でも透析を受けている頃に比べれば贅沢なことは言えない」とKさんは話す。
今は普通の人と何も変わらない生活ができているが、「この先、何が起こるか分からない。いつかまた透析に戻るのでは」という不安は常にあるという。手術が成功しても、10年で2〜3割の人に拒絶反応が起きることがあり、腎機能の低下が原因で人工透析を再開している人もいる。
「だからこそ、後悔しないように移植でもらった時間を大切にしたい。腎臓を提供してくれた母や移植の道を切り開いてくれた力石先生、自分を支えてくれた周囲に対して感謝しながら生きていく」。
Kさんは今、聖マリアンナ医科大学病院の移植者を中心とした「そらまめの会」に参加している。同会は移植者やその家族の交流の場となっており、悩みや現状を伝え合う場として活動している。Kさんは「移植者も元気に頑張っていることをもっとアピールしたい」と意欲的だ。「私の経験が移植医療を考えている人のお役に立てれば嬉しい」。
同会の問合せは同病院移植医療支援室【電話】044・978・1051まで。
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