宮前区 コラム
公開日:2021.04.16
連載第二回
宮前歴史探訪記
向丘の交通【2】 乗合自動車の乗客と道路
昭和3年から溝口〜蔵敷間の約7Kmの道を、フランス製のシトロエンという5〜6人乗りの車が、1日5〜6便走っていた。当時としてはスプリングがきいて乗り心地のよい車だった。フロントガラスの左上部には「乗合自動車」と表示があり、停留所も上作の「関本屋」、神木の「よろずや」、初山の「田澤屋」など数ケ所あった。しかし停留所はあって無いようなもので、何処でも止まって乗降できた。
道路は土砂利の凸凹道。日照りが続き道路が乾燥すると、車は砂煙をあげてガタゴトガタゴト走っていた。また雨が降ると道路が泥濘み、車はスリップしてしまうことが度々あった。その為に雨が降ると初山より先には行けず、初山止まりになってしまった。更に曲がりくねった狭い道路では、荷馬車や大八車とのすれ違いもできず、広い場所で待っていたり、広い場所まで戻ったりして大変だったそうだ。
この様な乗合自動車ではあったが、乗車したことのある古老は「時間が短縮され大変楽になった」と語ってくれた。しかし乗客は生活にゆとりのある人や急いでいる人に限られ、満員になることは殆どなかったという。ただ雨の日だけは別で、乗客は席を詰め合い譲り合って定員オーバーで走ることもあった。そのような時は、「車の中は世間話で花が咲き、楽しかったよ。」と古老は語ってくれた。
/宮前の歴史を学ぶ会・杉田墾生
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